【イエのサプリxラクジュ・コラボ動画①】気密無意識の住宅を丸裸にしてみた!施主の努力で気密性能はどこまで上がる?
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こんにちは、日本住環境 広報部(イエのサプリ編集部)です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。
家を建て始めてから気密性能の大切さに気付いても、工務店によっては気密施工をしてくれなかったり、高い施工費を追加で請求されたりすることがあります。
丸裸企画に応募してくださったNさんもそんな中の1人。工事の途中から工務店に気密処理を依頼できず、竣工後に勉強しながら自分で補修し、気密性能を上げていきました。
このブログでは、気密性能を上げるにはどのような補修をすればいいのか、またリカバリーでどの程度まで気密性能を上げられるのか、実例をもとに紹介します。
※イエのサプリ編集部では、リカバリーを推奨しているわけではありません。リカバリーをする際は専門家に相談の元、自己責任で実施してください。
目次 [表示させる]
気密施工で追加費用100万円と言われ…
今回の丸裸企画の始まりは、イエのサプリ編集部に送られてきた1通のメールです。
差出人は注文住宅を建てた施主のNさん。着工中に気密性能の重要さを知り、工務店へ気密と断熱を重視して建ててほしいとお願いしたところ、「気密シートを張るだけで(追加で)100万円以上しますよ。全部やったらとんでもない金額になりますし、気密なんてしたら家が長持ちしませんよ」と返答があり、気密を重視した家づくりをしてもらえませんでした。
工務店に気密施工をしてもらえなかったため、竣工後にYouTubeなどで得た知識をもとに、約7ヶ月かけてご自身でリカバリーを実行。できることはしたので、C値など家の性能を診断してほしいという熱意に満ちた内容でした。
訪問したNさん邸は総2階の間取りに、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)※で最高評価の星5つを取得。BEI(一次エネルギー消費量)は0.73となっており、ZEHを超える高性能な家となっています。
※BELSは「建築物の外皮性能」と「建築物で消費される一次エネルギー消費量」の指標で評価したものになるため、気密性能に対してつけられる評価ではありません。詳しくは公式サイト【建築物エネルギー性能表示制度について(一般のお客様向け)|一般社団法人 住宅性能評価・表示協会】をご確認ください。
自分で気密性能は上げられる?リカバリーした家の性能を検証
竣工から努力を重ね、リカバリーしてきたNさん。実際の性能について検証していきます。
熱画像カメラで家の断熱欠損を調査
Nさん邸は断熱材が160㎜ほどあればよいとされる地域ですが、Nさん邸にはNさんの希望で200㎜と少し厚めに入っています。
そのため、断熱性能がよい家と言えますが、しっかり断熱材が敷き詰められていなければ、断熱欠損が起き断熱材を厚くした意味がありません。
なので、まず熱画像カメラで断熱欠損が発生していないかを調査していきます。最初に断熱欠損ができやすい1階の天井と構造材の接合部であるコーナーを見ていきましょう。
気密性能の悪い家では、壁際や窓際から910㎜の辺りで断熱欠損が起きやすくなります。ですが、Nさん邸では熱画像の色にほとんど変化がありません。
2階の寝室では一部分だけ、色の変化があるところを発見しました。
原因としては、間仕切りの気流止めが上手くいっていないことが考えられます。
ただ、断熱欠損が起こっているのは寝室だけで、他の部屋も確認しましたが、問題はありませんでした。
風速計によるスキマ風の計測
次は風速計(TEST)を使用して、スキマ風がどこからどの程度入ってきているかを確認していきます。
熱画像カメラで発見した寝室の断熱欠損の周辺を調査したところ、裏側にあたるコンセントボックスや下に位置するコンセントボックス、天井際のクロスの割れ目から微量ではあるもののスキマ風が発生していました。
とはいえ、Nさん邸ではNさんが徹底的に家のスキマを2液の発泡ウレタンで塞いだため、スキマ風が入りやすいダウンライトや巾木などからは風をほとんど感じませんでした。
Nさん邸で1番スキマ風を感じたのは、点検口です。風速計で計測してみると、風速1.75㎥/hのスキマ風が入ってきていました。
実はNさん邸の点検口は気密用ではないものが使われており、今付いている内側の気密パッキンはNさん本人が付けたそうです。
パッキンが付いているものの若干のスキマがあいており、そこからスキマ風が入ってきてしまっているようです。
ただ、普段は点検口の四隅が目張りされているため、スキマ風を感じることはないと思われます。
小屋裏の木材の湿潤状態をチェック
家の気密性能が悪いと水蒸気などがスキマを通り小屋裏へまわり、結露することがあります。そのため、小屋裏の湿潤状態は家の性能や状態をチェックする1つの目安になるものです。
測定の結果、Nさん邸の小屋裏の木材の水分は13.0%。
木材の高耐久化を図るには、目安として20%以下を保つのがよいとされており、一定期間30%以上の含水率が維持されると木材が腐朽すると考えられています。
ただ、季節によって含水率は変わり夏の方が乾きやすくなるため、夏場に含水率10%を超えると、冬には20%を超える可能性があるようです。
今回の夏の計測では10%を超えてしまっていますが、冬場に測ってみて20%を超えていなければ、小屋裏の湿潤状態は問題ないと言えるでしょう。
気密測定で家の気密性能をチェック
熱画像カメラでの断熱欠損の調査やスキマからの風量測定、小屋裏の木材の湿潤調査などをしてきました。
最後に家全体の気密性能を調査していきます。
結果は、C値(相当隙間面積)が0.9㎠/㎡、αA(総相当隙間面積)が90㎠/。
C値は0㎠/㎡に近づくほど気密性能がよい家となりますので、かなりよい結果といえるでしょう。
リカバリーが無ければ、C値が1.0㎠/㎡をきることは難しく、3.0㎠/㎡に近い気密性能の低い家になっていた可能性もあります。
Nさんが一生懸命スキマを埋めたことで、家中のスキマを合わせても9×9cm程度しかないところまで性能を上げることに成功しました。
C値3.0㎠/㎡相当の家を0.9㎠/㎡まで改善させたリカバリーのポイント
リカバリーにより、C値1.0㎠/㎡以下まで改善できたNさん邸ですが、どのような部分をリカバリーしていったのでしょうか。詳しいリカバリーの場所やポイントについて紹介します。
人通口を発泡ウレタンなどでしっかり塞ぐ
C値を1.0㎠/㎡まで改善できた大きな理由の1つが、人通口を塞いだことです。
床断熱の家ではお風呂場だけ基礎断熱になっていることが多いのですが、そこにできた人通口を塞がれないまま放置されていることも珍しくありません。
塞がなければそのままスキマとなってしまうため、C値が2.0㎠/㎡をきれず気密性能が大幅に落ちてしまうのです。
Nさん邸では画像の通り、人通口にカバーを付け気密テープや2液の発泡ウレタンでしっかり塞いでいます。
もし床断熱の家で気密性能を上げたい場合、まずお風呂場の人通口が塞がっているかを確認してみてください。
床下の断熱欠損やスキマを発泡ウレタンで埋める
N邸は床断熱ですが、リカバリーする前は床下に断熱材が入っておらず欠損している部分もありました。
リカバリーでは欠損を埋めるため、Nさん自身が床下にもぐり2液の発泡ウレタンで補修したようです。
気密性能を上げるには、とにかく不要なスキマを埋めることが重要です。
床断熱の欠損部分だけではなく、床下を通る配管や配線などの貫通部にできたスキマも、しっかり埋めていくことがポイントになります。
気密用のコンセントボックスの設置
コンセントは壁を貫通させて配線するため、スキマ風が入りやすい場所の1つです。
そのため、気密が悪い家ではコンセントボックスを通り大量のスキマ風が室内に入ることもあります。
スイッチは家に複数あるので、何も処置をしないとコンセントの数だけスキマのある家になってしまうかもしれません。
このようなスキマをつくらないために、気密用のコンセントボックスを設置する方法があります。
Nさん邸では、依頼していた工務店が気密に無頓着だったため、気密用のコンセントボックスを設置は用意されていませんでした。
そのため、Nさんがメーカーから気密用のコンセントボックスを購入し、現場で気密テープの貼り方などを指導して、付けてもらったそうです。
その結果、コンセントからのスキマ風がほとんどない家をつくることができました。
気密に関心や知識がない工務店に依頼した場合、建築途中であれば自分で気密部材を購入して付けてもらうのも1つのポイントです(施主支給の場合は必ず工務店に相談の上、行ってください)。
夏は涼しく冬は暖かい家にするなら窓性能も重要!
家の温熱環境に1番影響を与えるのは「窓」です。断熱性能の悪い窓やサッシだと、真夏に熱が入ってきたり冬に熱が奪われてしまったり、スキマを埋めても寒い家になってしまいます。
より快適な家にするためには、サッシであれば樹脂サッシや木製サッシ、窓ならLow-E複層ガラスやトリプルガラスなど性能のよいものを採用していくことが重要です。
また、窓には遮熱タイプや断熱タイプといったものもあり、窓の方位によって使い分けることで、省エネで快適な住環境をつくることができます。
Nさん邸では、南側に隣家があり1階はあまり日が入らないため、2階の日が入る南側だけ断熱タイプにして1階や他の窓は遮熱タイプを採用しています。
注文住宅では窓の種類を細かく選ぶことができますので、工務店やメーカーとよく相談して検討してみてください。
もし、窓の性能が悪く窓際が寒い場合、内窓をつくり直接冷気が入らないように遮断するのが対策としておすすめです。
まとめ|気密性能のよい家をつくるために
C値0.9㎠/㎡のN邸では、エアコンが1階と2階に1台ずつしかありません。検証当日は30℃近い夏日でしたが、8人いた家の中でも1台のエアコンだけで快適な空間を維持できていました。
今回の実測を通し、しっかり勉強して丁寧にリカバリーしていけば、自分で気密性能を上げることも可能ということがわかりました。
ただ、リカバリーで性能を上げるには多くの努力が必要になるため、これから家を建てたい人は気密に詳しい工務店を選べるよう住宅性能や選び方について勉強していきましょう。
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