【ルールの無い全館空調】やるならまず〇〇を上げろ!全館空調について聞いてみた【コラボ】
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こんにちは、日本住環境 広報部(イエのサプリ編集部)です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。
家づくりではエアコンなどの空調設備についても決めていきますが、最近、空調設備として人気なのが「全館空調」です。
全館空調は家全体の室温を均質に保ち、快適な温熱環境を維持できる一方で、コストがかかることなどから「全館空調はいらない」「全館空調はやめとけ」といった否定的な意見もあります。
今回のブログでは、全館空調の仕組みやメリット・デメリット、採用する際の注意点などについて詳しく解説していきます。
全館空調の採用に迷っている人はぜひ参考にしてみてください。
目次 [表示させる]
全館空調とは?システムや 24時間換気との違い
全館空調とは具体的にどのようなものなのでしょうか。
ここでは、全館空調の定義やシステム、24時間換気との違いについて紹介します。
全館空調とは?
全館空調とは、冷暖房により家中の室温を均質に保つ仕組みを指します。
ただ、戸建て住宅における全館空調の定義は非常にあいまいで、呼び方もメーカーによって「全館空調」や「全館冷暖房」とバラバラで統一されていません。
このように定義があいまいなのは、戸建て住宅の空気環境に規制や基準がないからです。
ビル管法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)では、空気中の浮遊粉塵量や一酸化炭素濃度、相対湿度、気流などの空気環境に関する基準を定めていますが、あくまで対象は延べ面積が3,000㎡以上の非住宅建築物のみ。
戸建て住宅は対象外となり、室温や浮遊粉塵量などに対し具体的な数値はありません。
なので、全館空調といっても、メーカーによって何がどの程度できるかは違います。
全館空調の2つのシステム
全館空調では空調設備として、専用のエアコン(室内機)を使うケースと市販のエアコンを使うケースがあります。
どちらにも以下のようなメリット・デメリットがあるため、予算や理想の住まい方を考慮して検討してみてください。
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専用のエアコンを使った全館空調
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市販のエアコンを使った全館空調
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メ
リ
ッ
ト
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●部屋ごとに温度調整できる
●部屋の人数などを把握し自動で温度調節する機能がある
●長期保証がある
※メーカーによる
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●コスト面の負担が少ない
●市販のエアコンの機能を全館空調に使える
●市販のエアコンなので、使い方が簡単
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デ
メ
リ
ッ
ト
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●イニシャルコストや取り換え時のコストが高い
●市販のエアコンよりメンテナンスが複雑になることが多い
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●部屋ごとに細かい温度調節ができない
●自動で温度調節できない
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※一般的なメリット・デメリットになります。
全館空調と24時間換気の違い
24時間換気は換気により室内の化学物質濃度などを希釈し、シックハウス症候群の対策を目的とした住宅設備で、家中の室温の均質化を目的とする全館空調とはまったくの別物です。
そのため、全館空調を採用しても24時間換気を設置する必要があります。
24時間換気は、家の容積に対し0.5回/hの換気が法律で義務づけられており、「全館空調で換気もできる」と言われても0.5回/hに満たない場合、足りない分を他の換気扇や換気システムで補わなければいけません。
換気できる全館空調でも24時間換気の代わりにならないこともありますので、注意してください。
全館空調の3つの種類と特徴
全館空調といっても、「家中の室温を均質にする」方法はいくつかあります。
ここでは、全館空調の3つの種類と特徴について紹介します。
ダクト式の全館空調
一般的に全館空調と呼ばれるのが、ダクトで全室の空調をコントロールする方法です。
小屋裏などの空調室からダクトをつなぎ、全室に配管していきます。
ダクトを利用することで各部屋へ確実に冷暖房を届けられるため、他の全館空調のように空気の流れを設計したり追加でファンを付けたりする必要がありません。
小屋裏冷房と床下暖房よる全館空調
小屋裏冷房と床下暖房をセットにして、空調をコントロールする方法も全館空調の1つです。
小屋裏と床下に空調室を設け、夏は小屋裏から冷気を下ろし、冬は床下から暖気を送ります。
暖気が床下から出るため、冬は足元がじんわり暖かく裸足でも快適に生活できるのが特徴です。
ただし、家全体に空気が行き渡るように、空気の流れを考えた間取りや設計が必要です。
壁掛けファンやシーリングファンなどを上手に利用して、空気の経路を設計してもらいましょう。
高断熱高気密化による全館空調
高断熱高気密の家では、基本的にワンフロアに1台のエアコンで冷暖房を賄うことができます。
そのため、家中の室温を均質に保つという広義の意味であれば、断熱気密性能を高め1~2台のエアコンで室温をコントロールすることも全館空調と呼べるでしょう。
ダクトを付けたり小屋裏や床下に空調室を設置したりする特別な施工が不要になり、コスト面での負担を大幅に減らせるのがポイントです。
また万が一どちらかのエアコンが故障しても、もう1つのエアコンで対応できるので、トラブルにも強い全館空調といえます。
採用はやめた方がいい?全館空調のメリット・デメリット
全館空調の採用が増える一方で「やめた方がいい」というネガティブな意見もあります。
ここでは、部分間欠冷暖房と比較して、全館空調のメリットやデメリットを紹介します。
全館空調のメリット
家のどこにいても寒さ・暑さを感じない快適な生活ができる
全館空調のメリットは、常に室温が均質に保たれるため、家のどこにいても寒さや暑さを我慢せず快適に生活できることです。
冬の脱衣所で寒い思いをしたり、蒸し暑い部屋でエアコンが効くのを待ったりする必要がなくなります。
また、家の中に寒暖差ができないため、寒い日に起こりやすいヒートショックを防ぎ、住む人の健康を守ります。
メンテナンスの手間を減らせる
設置するエアコンの数が減るため、メンテナンスの手間を減らせるのも全館空調のメリットです。
ダクト式の全館空調ではダクト内にホコリが溜まるなどの意見もありますが、機械本体にフィルターが付いており、室内へ侵入できないような仕組みになっています。
全館空調のメンテナンスの頻度はメーカーによってバラバラで、月に1~2回簡単な掃除が必要なエアコンもあります。
ただ、それは部分間欠冷暖房でも同じです。
経済産業省では、省エネ効果を得るためには月に1~2回、エアコンの掃除を推奨しています(参考:省エネポータルサイト)。
頻繁なメンテナンスを面倒に感じる人は、メンテナンスの少ない全館空調を選ぶことをおすすめします。
間取りや内観のデザインの幅が広がる
全館空調にして壁かけエアコンをなくすことで、内装をスッキリ見せることができます。
また、部分間欠冷暖房のように他の部屋と空気の流れを遮断させる必要がないので、吹き抜けやリビング階段など解放感のある間取りの採用が可能です。
仕切りも最低限まで減らせるため、間取りや内装のデザイン幅を広げられます。
全館空調のデメリット
部分間欠冷暖房より電気代がかかる場合がある
全館空調では24時間常にエアコンを稼働させています。
そのため、季節や状況によっては部分間欠冷暖房より電気代が高くなってしまうこともあるでしょう。
ただし、それぞれの部屋でエアコンを運転させたり、頻繁につけたり消したりしているケースでは、部分間欠冷暖房を採用している家の電気代の方が高くなる可能性があります。
全館空調であれば、何部屋でエアコンを使っても1台分の電気代に圧縮できます。
故障すると全室の冷暖房機能がとまる
全館空調は基本的に1つのエアコンしか設置しないので、その1つが故障してしまうと家中の冷暖房が止まってしまいます。
時期やメーカーによっては、故障してもすぐに来てくれないこともあるでしょう。
全館空調とは別に冷暖房設備も用意しておくと安心です。
全館空調を採用する際の注意点
全館空調を採用する際に、いくつか注意すべきことがあります。
ここでは、採用する際の注意点について紹介します。
断熱性能と気密性能がないと機能しない
全館空調は前提として、断熱性能と気密性能がよくないと機能しません。
家中の空気を均質にしようとしても、スキマがあるとそこから外気が出入りしてしまうからです。
なので、断熱性能は断熱グレードG2(6地域でUa値0.46)、気密性能はC値1.0㎠/㎡以下、できればC値0.5㎠/㎡程度の住宅性能が望ましいでしょう。
全館空調を採用するのであれば工務店やハウスメーカーと契約する前に、今まで建ててきた家のC値や気密施工、気密測定できるかどうかについて確認してみてください。
将来的な機器の取り換えコストを含めて比較する
全館空調は工務店やハウスメーカーによっては複雑なシステムを組んでいることがあり、壁付けエアコンよりもイニシャルコストがかかります。
また、設備機器は一般的に15年前後で更新や取り換えが必要になるため、そうなった場合にどの程度のコストが発生するか、あらかじめ確認しておくことが重要です。
メーカーによっては長期保証がつくものもあり、イニシャルコストは高いけど、買い替えが安いということもあります。
部分間欠冷暖房を複数台設置するのと全館空調のどちらが高いかは、施工する工務店や使用するエアコンで変わります。
どちらにしても、イニシャルコストだけではなくランニングコストや取り換え時のコストを含め比較検討してみてください。
0.5回/hを換気できる24時間換気を設置する
1つのエアコンで家中に空気を送るため、換気がしっかり稼働していない家では、リビングのニオイが他の居室まで行ってしまうこともあります。
ニオイ問題を解決するには、しっかり0.5回/h換気できる24時間換気を設置しましょう。
24時間換気にも種類があり、どのように選べばいいのかはこちら「【メーカーの本音】第1種・第3種換気のデメリット!後悔しない選び方とは」を参考にしてください。
換気は、あらかじめ換気量を計算できても、実際にその通りの換気ができているかは測ってみないとわかりません。
そのため、引き渡し前に換気量測定をしてもらうことをおすすめします。
ダクトを使う場合はダクティングに注意する
ダクトは途中で潰れたり、グネグネと曲がったりすると空気の通りが悪くなります。
性能のよい全館空調を採用しても、ダクティングのせいで思うように空気が送られてこないリスクもあります。
設計時にダクトがどこを通るか決めていると思いますので、よく確認しましょう。
また、設計はよかったのに実際はひどいダクティングをされていたということもありますので、引き渡し前に目視できる部分は一度確認することをおすすめします。
全館空調を省エネで効率的に機能させる2つのポイント
全館空調を省エネにそして効率的に稼働させるには、熱の流出を防ぎ冷暖房にかかる負荷を軽減させる必要があります。
家の中で熱の流出が大きいのは窓などの開口部です。
そのため、できれば窓は断熱性能の高い樹脂サッシを使い、ガラスは単板ではなくLow-Eなどの複層ガラスでしっかり断熱しましょう。
この他にも、日射による熱の損失について考えておくとより冷暖房負荷を軽減できます。
ここでは、全館空調を採用するなら併せて考えておきたい、日射取得や日射遮蔽について紹介します。
太陽高度を考慮して日射取得・日射遮蔽の計画をする
冬と夏では太陽高度が変わり、家の中に入る日射量も変わってきます。
日射量についてまったく計画しない家では、下の左図のように逆V字型になってしまうのです。
こうなると、夏を中心に日射のストック量が多くなり、冷暖房負荷が重くなってしまいます。
日射取得や日射遮蔽を計画しておくと、右図のようにV字型になり冬に熱を確保し夏は熱を遮り、冷暖房負荷を軽減できます。
例えば、南側の窓に庇を取り付け、夏の強い日射を遮り家の中へ入れず、冬は日差しを積極的に取り入れ室内温度を太陽光で上げていきます。
庇だけではなくアウターシェードや外付けのブラインドなども日射取得・日射遮蔽に効果的です。
窓の方位に応じて遮熱タイプと断熱タイプを使い分ける
日射を遮るだけではなく、窓ガラスの使い分けもポイントです。
窓ガラスには日射取得を重視した断熱タイプ日射取得型と夏場の遮熱性を重視した遮熱タイプ日射遮蔽型があります。
家の方位に応じて使い分けることで、冷暖房負荷を軽減することができます。
設計時に配慮してくれる工務店やハウスメーカーもありますが、配慮してくれないところも多いため、しっかり遮熱タイプと断熱タイプを考慮してほしいことを伝えるようにしましょう。
まとめ|全館空調はいる?いらない?迷った場合に考えてほしいこと
全館空調は室内温度を均質に保つ優れた冷暖房システムです。
一方で、1つのエアコンで家中の空気を管理しなければいけないことによる、電気代や故障時などのデメリットもあります。
そのため全館空調がいるか、いらないか迷ってしまう人もいるでしょう。
もし採用するか迷った場合、自分や家族がどのように住みたいか・生活したいかで判断してみてください。
例えば、寒がり・暑がりでいつも快適な家にしたい人は全館空調がおすすめですし、夏でも冬でもエアコンをほとんど使わない人は採用しなくてもいいかもしれません。
全館空調の採用にかかわらず、気密性能が高い家はエアコンを強くしなくても快適で冬に暖かく夏に涼しい空間を維持することができます。
C値1.0㎠/㎡を下回れるよう、工務店やハウスメーカーに確認してみてください。
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