【注文住宅】都内の高気密高断熱住宅を丸裸にしてみたらヤバい欠損が判明した
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こんにちは、日本住環境 広報部(イエのサプリ編集部)です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。
ローコスト住宅を建てたものの、住んでみたら寒かったり間取りやデザインをダサく感じてしまったりと後悔する人も多くいます。
予算がないからといって高性能な家をあきらめる必要はありません。
今回のNJKブログでは、地元のローコスト住宅(基本仕様2,000万円以下)でC値0.4㎠/㎡の高気密な家を建てたC邸にお邪魔して温熱環境やこだわったポイントについて調査しました。
コストをできるだけ抑えたいけど、高性能な住宅がつくりたい人はぜひ参考にしてみてください。
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※イエのサプリ編集部では、リカバリーを推奨しているわけではありません。リカバリーをする際は専門家に相談の元、自己責任で実施してください。
ローコスト住宅は本当に後悔する?住宅性能を調査してみた
ローコスト住宅で後悔する話はよく耳にしますが、住宅性能を確保できれば省エネで快適な生活を送ることができます。
イエのサプリ編集部では地元の工務店で建てたローコスト住宅のC邸にお邪魔し、住宅性能を調査してきました。
C邸ではどうなっているのか、1階から熱画像カメラを使って室温や断熱欠損、スキマなどを調査していきます。
1階の住宅性能を調査
1階の床(基礎断熱)
1階の床の暖かさは、家の気密性能によって大きく左右されます。
以前検証したC値2.5㎠/㎡の3階建て建売住宅では、暖房を稼動させていても10℃までしか上がらず、足元の寒い家となっていました。
C邸では1階の床の温度が20℃前後で保たれていて、北側に面した床の端でも19℃と非常に暖かいのがわかります。
床暖房がなくても断熱気密性能を上げることで、冬でも裸足で歩けるような暖かい家をつくれます。
玄関ドアやドア枠は外と直接触れるため、断熱性能が低いとそこから熱が出入りすることになります。
C邸はドア枠が熱を伝えやすいアルミ製で、熱画像カメラで見ると14℃近くまで冷えていました。
C邸は施主のリカバリーでドアへ断熱材が付加されているため、ドア部分はしっかり断熱され19℃に近い温度となっています。
玄関で他に寒い部分がないか探してみたところ、玄関の側面にある小窓から冷気が入り込んでいるのがわかりました。
ただ冷気が真下に落ちてこないため、玄関全体が寒くなったり窓周辺で結露したりすることはありません。
ドア枠が少し弱いものの、全体的に暖かい玄関となっています。
脱衣所・お風呂場
配管の多い脱衣所やお風呂場は、家の中で寒くなる場所の1つです。
室温が10℃を下回ることも多い中、C邸の脱衣所は1番寒い場所で16℃となっています。
お風呂場内を確認したところ、下の熱画像の通り脱衣所とほぼ同じ温度となっていました。
C邸は基礎断熱を採用しているため配管の多いお風呂場でも床下の気密処理が不要となり、気密のとりやすい家となっています。
2階の住宅性能を調査
気密性能が悪いと2階は1階よりも暑く、3階よりも寒い中性帯となり、家によっては1階の床と3階天井で20℃以上の温度差ができることもあります。
下の熱画像では階段と室内で温度差が発生しているように見えますが、室内でエアコンを稼働させていることが原因です。
数値上で見ると大きな温度差はありません。
構造材の木が入っている部分以外、青く写っているところがないことから丁寧に断熱施工されているのがわかります。
北側にあるトイレも居室との温度差ができやすく、ヒートショックを起こしやすい場所です。
C邸のトイレは、完全に閉め切った状態でも16℃前後と暖かく、1階の室温と比較しても大きな差はありません。
端の方には14.4℃と冷たい場所がありますが、全体的に暖かいためヒートショックの心配もありません。
3階の住宅性能を調査
最後は暑くなりやすい3階の調査です。
北側の居室の壁を見ると2階の階段室と同様に欠損部分がなく、丁寧に断熱材が詰め込まれているのがわかります。
天井も同様に、構造材の木がどこにあるのかがわかります。
どちらも15℃前後と暖かく、1階や2階と比較しても室温に大きな差はありません。
このように気密性能のいい家では、フロアのエアコンを稼動させていなくても、下の階のエアコンで暖かい部屋をつくれます。
C値0.4㎠/㎡のローコスト住宅に住んでみた施主の体験談
高気密高断熱のローコスト住宅に住んでみて不快感はないのか、生活がどのように変わったかなど施主の感想を聞いてみました。
月の電気代が高くても1万円前後に抑えられる
高気密住宅ではスキマから外気が出入しないため、冷暖房の効きがよくなり消費電力を抑えることができます。
家の大きさにもよりますが、C邸では春や秋など気候のいい時期では冷暖房費を含め月の電気代が4,000~5,000円程度(2022年2月撮影時)。
冬や夏でも1万円になることは稀で、月の電気代は8,000円程度に納まるそうです (2022年2月撮影時)。
ちなみに撮影から1年後の2023年12月の電気代は、24時間全館空調でも7,000円(暖房は22~23℃設定)。
電気代が高騰した1月では1月では14,000円にまで上がったものの、2万円を超えることはありませんでした。
夏はエアコン1台で家全体の温度を均一できる
C邸は3階建ての住宅でエアコンは各フロアに1台ずつ設置されています。
ただ、一度にすべてのエアコンを運転することはなく、冬は1階と2階のエアコン、夏は3階のエアコン1つで家全体の空調を賄えるようです。
イエのサプリ編集部が調査した日も外気温は5℃でしたが、2台のエアコンで家中が20℃前後に保たれていました。
エアコンの台数が少なければ日々の電気代を減らせるだけではなく、設置にかかる初期費用も抑えることができます。
気密性能や窓性能がいいので外の騒音が気にならない
高気密な家では外の音がスキマから入りにくいため、たとえ道路に面していても室内では静かに過ごせます。
C宅は気密性能がいい上に家中の窓が二重窓になっているので遮音性が高く、目の前の道路にトラックが通っても室内まで音が響くことがありませんでした。
高性能なローコスト住宅でこだわった5つのポイント
C値0.4㎠/㎡という高性能なローコスト住宅をつくる際、どのようなことにこだわったのでしょうか。
ここでは、施主のこだわりポイントについて紹介します。
玄関のドアや土間の断熱性能
玄関のドアは窓と同じく熱の出入が大きいため、暖かい玄関をつくるためには断熱性能を高めることが重要です。
C邸では複合樹脂サッシと同等程度の断熱性能を持つドアを採用していましたが、玄関から冷気を感じたためリカバリーを行い、ドア自体に7㎜厚の断熱材を付加しました。
また、見た目が悪くならないように断熱材の上から化粧シートを張り、一目見ただけではリカバリーしたことがわからないような仕上がりにしたのもこだわりの1つです。
ドアの他にも、断熱材を入れる予定のなかった土間やまわりの基礎部分に、建築士と相談して50㎜の断熱材を追加してもらいました。
下の写真を見ると右側に比べ、左側の方が厚みを持っているのがわかります。
ドアや土間、基礎まわりに断熱材を追加したことで、玄関の寒さを緩和できました。
基礎断熱に変更して気密処理を削減
C邸を建てた工務店の標準仕様は床断熱でしたが、工務店側が気密に詳しくなかったため、基礎断熱に変更してもらったのもこだわりの1つです。
基礎断熱は床下を通る配管や配線の気密施工が不要になるため、気密に詳しくない工務店でも高気密な家をつくりやすい工法です。
ローコスト住宅はコスト削減のために床断熱を標準仕様としているケースがほとんどですが、気密性能に詳しくない工務店であれば、基礎断熱に変更してもらうことをおすすめします。
ホウ酸処理や蟻返しのパッキンなどによる防蟻処理
基礎断熱を採用するのであれば、気を付けないといけないのがシロアリ被害です。
基礎断熱では断熱材の中を通って土台に到達したり、断熱材と基礎の間のスキマから侵入したりするため蟻道が見つかりづらく、被害が大きくなるリスクがあります。
実際にC邸ではどのような防蟻処理が行われているのか紹介します。
健康被害を考え薬剤を標準仕様からホウ酸へ変更
基礎断熱では床下空間が室内と同じ扱いになるため、散布した防蟻剤が室内に流れこみ体調不良を引き起こしたなどの健康被害も報告されています。
C邸では基礎断熱にするにあたり標準仕様の薬剤からホウ酸に替え、コーキングなどにも薬剤が含まれないものに変更しました。
アリ返しのパッキンや防蟻成分入りのパテによる処理
シロアリを土台へ到達させにくくするには、アリ返しというパッキンの採用もおすすめです。
標準仕様では採用されていないアリ返しでしたが、採用してもらい基礎断熱のシロアリ対策を強化しました。
この他にも基礎のスキマを埋めるためのコーキング処理には、ホウ酸などの防蟻成分が含まれたものを使用するなど、細かい部分にまで配慮した防蟻処理を行っています。
オール樹脂や内窓を取り入れた窓性能
C邸では断熱にもこだわっており、熱の損失が大きい窓はできる限りオール樹脂窓を採用しています。
熱の流出が少ないため外気温が5℃でも室内の窓は約20℃を維持し、1番冷たい場所でも約16℃と暖かくスキマ風も感じません。
もっとも隅部では13.7℃まで下がりますが、全体的に15℃前後となっているため快適な温度といえます。
予算の関係で樹脂窓にできなかったアルミ樹脂複合窓には、すべて自作の内窓を設置しているのもこだわりの1つです。
木の枠に断熱性のある中空ポリカーボネートを2枚張り、四隅にスポンジのパッキンを付けることで少しでも気密できるような形となっています。
断熱性のある内窓を付けることで、窓からの冷気軽減に成功しました。
室温を均一にするための空気循環できる仕組み
エアコンが1フロアに1台ずつしかないC邸では、室温を均一にするための工夫があります。
それが開閉式の欄間付きドアとエアパスファンです。
開閉式の欄間をドアに付けることで、ドアが閉まっていても欄間を開けていれば空気が出入りして、フロアの温度を均一に保ちます。
これに加え、C邸ではエアパスファンを使い隣接する部屋へと空気を送り出すことで、空気が循環するような仕組みをつくっています。
エアコンの設置台数を少なくするのであれば、空気が家中に行き渡るような通気経路を工務店に考えてもらう必要があります。
ローコストで理想を叶える家づくりの秘訣
ローコストで理想の家をつくるには、施主側の努力と信頼できる工務店を選ぶことがポイントです。
ここでは、ローコストでC値0.4㎠/㎡の高断熱高気密住宅を建てた施主の経験をもとに、予算内で理想の家をつくる秘訣について紹介します。
YouTubeなどを使った住宅性能の勉強
イエのサプリ編集部では、今まで様々な住宅にお邪魔して住宅性能を検証してきました。
施主インタビューでは、断熱や気密についてほとんど知識がないまま家づくりを始めてしまい「住んでみたら寒い」といった話もよく耳にします。
C邸の施主であるCさんは寒冷地へ留学した際に高気密高断熱の家を経験したこともあり、家を建てるときには耐震だけではなく、断熱や気密について勉強をしたそうです。
そのため、工務店と打合せする際に断熱性能や気密性能について具体的な数値を出し、目標値を共有することができました。
知識のないまま家づくりを始めてしまうと、工務店が提案してきた数値がいいものなのか悪いものなのか判断が難しく、そのまま契約してしまい性能の悪い家ができてしまうこともあります。
ローコストで高性能な家を建てるためにも、工務店と打合せをする前に住宅性能についてある程度勉強しておきましょう。
契約時にC値1.0㎠/㎡以下や気密測定の実施を書面上で約束
気密性能は「C値1.0㎠/㎡にできる」と言われていても測定してみないと実際の数値がわからないため、契約時にC値の設定や気密測定を約束しておくことが重要です。
ですが、C値の設定や気定測定は義務ではないので、基本的に工務店側から提案されることはありません。
万が一数値が悪かった時、必ず補修してもらえるようにC値の設定や気密測定の実施は書面上で約束するようにしましょう。
仕様変更などに関する打合せ・確認
C邸ではよりよい家をつくるために床断熱を基礎断熱に変更したり、部分的に窓をオール樹脂にするなど様々な仕様変更を行っていましたが、どこまで変更できるかは工務店によって変わってきます。
また、仕様変更は追加費用が必要になってきますので、契約する前に使用変更できる範囲や追加予算などについて確認しておくことをおすすめします。
建築現場を自分の目で確認
工務店と目標のC値などを決めていても、実際にどのような施工をされているかは現場を見ないとわかりません。
現場に行き現場監督や大工の対応を見ることで安心できますし、信頼関係を築きやすくなります。
Cさんも実際に現場を目で見て、現場監督や大工の対応に安心を持てたようです。
ただし、あまり通いすぎても邪魔になってしまい、関係悪化を招く可能性があるので頻度などには注意してください。
予算の関係でローコスト住宅を選ぶことになっても、住宅性能を確保できれば住んでみて後悔するリスクを抑えられます。
ローコストで高断熱高気密住宅を建てるには施主側の勉強も必要ですし、C値や気密測定の実施を約束してくれる工務店を選ぶことが重要です。
気密をほとんどしたことのない工務店でも、細かく打ち合わせを行うことでコストを抑えつつ高性能な家を建てられます。
住宅購入前にここだけは押さえよう!
家が寒くなる仕様や間取りの解説まとめ【切り抜き】