建売住宅で起きた悲劇と高気密高断熱に潜む罠!購入する際の注意点
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こんにちは、日本住環境 広報部(イエのサプリ編集部)です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。
建売住宅とは、建築会社や不動産会社が事前に用意した土地と建物をセットを購入する住宅のことです。
建売住宅は土地の条件やデザインが気に入れば、注文住宅と比較しても安価にマイホームを購入できる一方で、「隙間風を感じる」「家がとにかく寒い」といった意見もよく聞きます。
では、「高気密高断熱」を売りにした建売住宅であれば、寒さは感じないのでしょうか。
今回のNJKブログでは、高気密高断熱を謳う建売住宅を購入する際の注意点や後悔しないためのポイントについて紹介します。
目次 [表示させる]
高気密高断熱の新築建売住宅で起こった悲劇!「高気密高断熱」の罠
これはイエのサプリ編集部に送られてきた「高気密高断熱と謳われていた建売住宅を購入したら後悔した」という方からのコメントです。
高気密高断熱住宅を期待していたのに、寒い家となってしまい非常に後悔している様子が伝わります。
建売住宅を選ぶ際は「高気密高断熱」という言葉を額面通り受け取らず、以下の2点に注意しましょう。
罠1.高気密高断熱には明確なルールはない
まず「高気密高断熱」という言葉には明確なルールや基準がありません。
そのため工務店さんの考える高気密高断熱と、自身が期待する高気密高断熱に認識の違いがある場合があります。
チラシやHPに記載された高気密高断熱をそのまま鵜呑みにすると、今回のケースのように寒い家になってしまうかもしれません。
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建売住宅に住んで後悔するトラブル例!購入前の3つのチェックポイント
罠2.特定の工法で高気密高断熱になるわけではない
高気密高断熱でよくある誤解が「2×4工法」や「パネル工法」、「ウレタンの吹き付け工法」で家を建てれば高気密になるというものです。
これらは全て誤解で、正確には「気密が取れる」工法ではなく「気密が取りやすい」工法になります。
コメントされた方の家では吹き付け断熱を採用した工法のようですが、もちろんそれだけで気密は取れません。
過去の検証では吹き付け断熱でもC値が2.0㎠/㎡や、3.0㎠/㎡という物件もありました。貫通部やキワの部分の処理を怠るとこのように気密性能が低くなるケースもあります。
今回コメントされた方の工務店ではこのような誤解があったのかもしれません。「○○工法だから高気密高断熱」という言葉には注意が必要です。
建売住宅のデメリットは室内の寒さ!高気密高断熱になりづらい理由
建売住宅はローコストで購入しやすいと言われる反面、「寒い」と言う意見を多く見かけます。
ここでは「建売住宅が寒い」「高気密高断熱になりづらい」と言われる理由を見ていきます。
ローコストで品質を担保しづらい
建売住宅ではコストを抑えるために、断熱性能の低い断熱材を採用しているケースが多くみられます。
例えば、断熱材としてよく使われるグラスウールは、密度や厚みによって断熱効果が大きく異なりますが、建売住宅ではグレードの低いものが使われている場合も珍しくありません。
また、気密性能の面でも気密測定を実施している建売住宅は少ないため、「高気密」と記載されていても具体的なC値が提示されていなければ、実際は住宅中に隙間があいていたということもあります。
加えて最も断熱欠損しやすいと言われる窓も、断熱性能の高いものではなく、ペアガラスやアルミサッシなどの安価なものを標準仕様として使っていることがほとんどです。
これらの要因により、建売住宅は外気温に影響されやすく、冬は寒くなりやすいと言えます。
どのような施工で建てられたか確認できない
建売住宅では、すでに完成していることが多いという点も寒さの原因です。
断熱材の仕様は事前に確認することが可能ですが、実際にどのように施工されていたかなど施工中の不備や欠陥については確認することができません。
例えば、断熱材がしっかり隙間なく充填されていなければ、断熱材が本来持っている断熱性能をしっかりと発揮することができず熱の損失が大きくなります。
また、シートやテープなどで気密層が連続しているかも施工中でなければ確認ができません。
気密層が連続していなければ隙間風が侵入し、住宅内部を冷やしてしまいます。
建売住宅で構造見学会を開催して建築途中の施工を見せるというケースはあまりなく、きちんとした気密断熱性能を発揮できるような施工がされているかどうかは確認できません。
こういった理由で高気密高断熱になりづらいと言えます。
高気密高断熱の建売住宅を購入して後悔しないためのポイント
高気密高断熱を謳う建売住宅の購入で後悔しないためのポイントはとにかく仕様・数値を確認することです。
前述した通り「高気密」にも「高断熱」にも基準がないため、1つの物差しとしてどのように仕様・数値を見れば良いかを解説していきます。
断熱性は最低でも等級5以上の物件にする
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1・2地域
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3地域
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4地域
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5地域
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6・7地域
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H28年
省エネ基準
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0.46
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0.56
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0.75
|
0.87
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ZEH基準
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0.4
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0.5
|
0.6
|
G1
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0.34
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0.38
|
0.46
|
0.48
|
0.56
|
G2
|
0.28
|
0.34
|
0.46
|
G3
|
0.20
|
0.23
|
0.26
|
等級4
|
0.46
|
0.56
|
0.75
|
0.87
|
等級5
|
0.4
|
0.5
|
0.6
|
等級6
|
0.28
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0.34
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0.46
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等級7
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0.20
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0.23
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0.26
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日本の断熱性能の基準では1~7の7つの等級が設けられ、数字が大きくなるほど断熱性能が高いことを示します。
これは国が定めた法律の中で規定されている住宅性能表示制度の中の評価基準の1つです。
この中で、断熱等級は最低でも等級5以上の性能であることが望ましいと言えます。
実は、2021年までは等級4が最高等級であったため、等級4でも「高断熱」という工務店もいましたが、この等級4は1999年の基準のためけして高断熱とは言えません。
また、断熱等級5が具体的にどの数値になるのかは、住んでいる地域によって変わります。日本では、北海道から沖縄まで、温度や気候によって8つの地域区分に分けられています。
まずは「省エネ基準地域区分」で住む予定の場所が何地域に当たるのかを確認しましょう。
地域区分や断熱等級については詳しくはこちらの記事でも紹介しています。
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HEAT20(G1・G2・G3)とは?G3の家の暖かさを熱画像カメラで検証してみた
ただ建売住宅では断熱材がどのように施工されているかなど、施工精度については確認ができないのであくまで1つの目安として、この断熱等級5以上であることを確認しましょう。
気密性は最低でもC値=1.0㎠/㎡以下の物件にする
気密性は実測値なので「高気密」であるかどうかは、気密測定をしていなければわかりません。
そして高気密を謳うのであれば、やはりC値=1.0㎠/㎡以下が望ましいと言えます。
なぜC値=1.0以下が良いかについてはこちらの記事でも紹介しています。
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高気密住宅によくある4つの疑問を解消!後悔しない人が知ってる気密の知識
しかし、工務店の中にはC値=5.0㎠/㎡でも高気密を謳うケースもあります。
C値=5.0㎠/㎡というのは、1999年に次世代省エネ基準で制定された気密性能の基準です(現在は廃止されています)。
その基準では北海道などの寒冷地でC値=2.0㎠/㎡以下、その他の地域ではC値=5.0㎠/㎡以下と記載されていました。
およそ20年以上前の基準ですので現代の住宅性能としては不十分で、とても快適な住まいとは言えません。
なので、C値=1.0㎠/㎡以下の物件を建てられるか、気密測定をしてくれるかを事前に確認しておくことが後悔しないポイントになります。
HPなどを見て気密測定の測定値が無い建売住宅には注意が必要です。
高気密高断熱の建売住宅は存在する?
結論、あります。しかしそれほど数多く出回ってはおらず、希望するエリアにあるとは限ら無いためあまり期待しすぎないようにしましょう。
ただ、建売住宅を購入した後に気密・断熱リカバリーで高気密高断熱にする猛者もいます。
イエのサプリ編集部が訪問したお宅では、住み始めの気密性能(C値)が0.8㎠/㎡という建売住宅がありました。
建売住宅としては十分高気密な物件でしたが、施主はそこから独自に気密・断熱のリカバリーを実施。住み始めてから2年経った状態をイエのサプリで測定してみたところ、まさかのC値=0.4㎠/㎡という驚きの結果でした。
こちらの住宅にについては下の動画「建売住宅のヤバい家の実態丸裸!」をごらんください。
もし建売住宅を購入後に暑さや寒さが気になるようであれば、気密・断熱リカバリーをするというのも1つの方法かもしれません。
※イエのサプリ編集部では、リカバリーを推奨しているわけではありません。リカバリーをする際は専門家に相談の元、自己責任で実施してください。
高気密高断熱を謳う建売住宅を購入する際には必ず仕様・数値を確認しましょう。
高気密高断熱には明確なルールがないため、20年前の基準でもって高気密高断熱と主張する会社もあります。
イエのサプリでは断熱性能は等級5以上のもの、気密性能はC値=1.0㎠/㎡以下のものをおすすめしていますが、条件を満たす建売住宅の数が少ないことも事実です。
そのため、どれくらいの断熱性能、気密性能であれば満足がいくのか落とし所を探っていくことも重要です。
高気密高断熱を謳う建売住宅の購入時には、必ずご自身で事前に住宅性能についての知識を習得しておくことをおすすめします。
まずはよくある建売住宅の実態を知ろう
【ローコスト/建売を検討中の方必見】都内に良くある建売住宅の性能を丸裸にしてみた