気密は地震で経年劣化する?実際の高気密高断熱住宅を調査してみた!NJK BLOG

2023.08.28
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気密は地震で経年劣化する?実際の高気密高断熱住宅を調査してみた!

高気密住宅の地震による経年劣化を実際に調査してみた


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高気密高断熱住宅とは家の隙間を限りなく小さくして余計な空気の流出入を最小限にすること、そして建物外皮に温度が伝わりにくい素材を入れることで、室温が外気の温度に左右されないようにする住宅のことです。

家の中を快適にすることが高気密高断熱住宅の目的ですが一方で、「家の気密性を上げても地震などで経年劣化するから意味が無い」という意見も聞きます。

本当に気密は地震で経年劣化するのでしょうか。

今回のNJKブログでは、実際に大きめの地震にあった仙台市の高気密高断熱住宅で、気密の経年劣化がどの程度あるのか調べてきました。


目次  [表示させる]

の気密断熱性能は地震でどのくらい劣化するのか

高気密高断熱の家

Sさん邸(仙台市/3地域)

竣工年:2019年冬竣工(撮影当時:築3年)

工法:木造軸組在来工法

坪数:30坪

24時間換気:第3種ダクト式換気

断熱性能:UA値0.5(G1相当)

気密性能:C値=0.3㎠/㎡

 

こちらの仙台市のSさん邸では竣工当時の気密性能(C値)が0.3㎠/㎡と超高気密住宅です。

気密測定の結果

一方、仙台市ではこの3年間の間に大きめの地震(マグニチュード7クラス・震度4~5強相当)が4回きています。仙台市の地震情報

※気密の経年劣化に数値的な基準はありませんが、イエのサプリではおおよそC値が1.0㎠/㎡〜2.0㎠/㎡程度下落(Sさん邸であれば1.3㎠/㎡〜2.3㎠/㎡)すると問題あり、0.5㎠/㎡以内(Sさん邸であれば0.8㎠/㎡)であれば許容範囲とみなしています。

気密測定の結果2

再度気密測定をしたところ、気密性能(C値)は0.5㎠/㎡という結果でした。

気密性能は0.2㎠/㎡下がっただけでしたが、温熱環境に変化があるかを熱画像カメラでもチェックしていきます。

撮影は11月25日で外気温は12℃、朝6時から8時の間はエアコンをオンにし、撮影時の10時半でエアコンはオフにした状態です。

洗面所の熱画像カメラ

北側にある洗面所では17℃前後です。

お風呂の熱画像

お風呂は18℃と全然寒くありません。

居室の熱画像

家全体が暖まっているので床面は16.2℃、壁面は20℃ぐらいです。

高気密なので家全体が暖かくなっているということがよくわかります。

結果、Sさん邸では地震による大幅な経年劣化や、温熱環境への致命的な欠陥は見受けられませんでした。

震により気密断熱性能が悪化する家とは

Sさん邸では建築中から丁寧な気密断熱施工がされていたため、大きな問題は見当たりませんでしたが、一部に弱点となる箇所が見つかりました。

高気密高断熱の施工

Sさん邸の建築中の写真。気密シートが綺麗に施行されている。

泡ウレタンだけで断熱施工している

Sさん邸では壁や屋根面で繊維系断熱と気密シートや気密テープ・パッキンでしっかり気密断熱を確保しています。

経年によりクロスが裂けている部分はあるものの、上記の施工をしているおかげで裂けた部分からのスキマ風はまったくありません。

ウレタンで気密性が劣化1

しかし寝室の間仕切り壁などの一部は上記の施工がうまくできない部分があり、吹き付けのウレタンで施工したとのこと。

今回はその吹き付けウレタンの割れが原因で、クロスの避けた部分からスキマ風が発生してしまいました。

※機械を使って外に300㎥/hの空気を出した状態(室内を減圧にした状態)にするとコンセントからのスキマ風でティッシュがなびいてしまう。

一般的に吹き付けウレタンによる施工はスキマなく充填することで気密性を確保しやすいと言われています。

一方、吹き付け後に硬化するため、地震などで建物が動いた際に柱や梁との追従性が気密シートと比べて低いという点は注意が必要です。

ただSさん邸はC値=0.5㎠/㎡と高気密のため、この吹き付けウレタンの割れによるスキマが今すぐ大きな悪影響を起こすことは低いと考えられます。

密シートを使わずにクロスだけで気密をとっている

クロスの亀裂

気密シートによる施工のおかげでクロスからのスキマ風無し

Sさん邸では気密シートを使った施工により、クロスが裂けた部分であってもスキマ風の流入はありませんでした。

ここで注意したいのは、気密シートを使わずにクロスだけで気密をとっている現場もよくあるという点です。

クロスの割れから冷気

以前測定した現場では、こういったクロスが裂けた部分からスキマ風が発生している現場もありました。

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物件完成時の気密測定で仮にクロスだけの施工で良い気密の値が出たとしても、クロスは気密部材では無いため経年によって気密性は劣化する可能性があります。

クロスに関わらず、仕上げ材と呼ばれるボードや巾木なども同様で、工務店からこれらの仕上げ材で気密はとれると言われた場合は注意が必要です。

24時間換気の換気量も地震の影響を受ける?

24時間換気の換気量測定

最後に24時間換気の換気量が地震による影響を受けるかを見ていきたいと思います。

Sさん邸ではダクト式の第3種換気システムを採用されています。

換気回数は1時間あたり、住宅の気積(容積)の半分である0.5回/hをクリアしていることが建築基準法で義務付けられており、Sさん邸でも当然クリアしています。

Sさん邸の必要換気量は130.13㎥/hですが・・・。

ダクト式3種による24時間換気の換気量

測定した結果、139.2㎥/hと0.5回/hをクリアしていました。

Sさん邸では大きめな地震を4回受けていますが、24時間換気の換気量への影響は無いことがわかりました。

とめ

Sさん邸では3年間の間に大きめの地震(マグニチュード7クラス・震度4~5強相当)が4回きているものの、気密性(C値)は0.3㎠/㎡から0.5㎠/㎡に変わった程度で、他の調査でも大きな問題はありませんでした。

一部でウレタンの割れによるスキマ風の流入は確認できたものの、基本は気密シートによる丁寧な気密施工がされているため、大きな経年劣化は無いということがわかりました。

気密性のデメリットとして「家の気密性を上げても地震などで経年劣化するから意味が無い」という意見もよく聞きますが、今回のSさん邸には該当しなかったようです。

地震による経年劣化を防ぐには、クロスに頼らず建築段階で気密シートがしっかりと丁寧に施工されていることが1つのポイントになります。

ぜひ住宅を建てる際の参考にしてみてください。

 

気密の経年劣化についてもっと学びたい方はこちら
【高気密高断熱住宅】経年による劣化具合を検証した結果がスゴイ件【Q&A】
 



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