【大手ハウスメーカー】5000万の建売住宅を丸裸にしてみたら闇が深かった件
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こんにちは、日本住環境 広報部(イエのサプリ編集部)です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。
「エアコンの効きが悪い」
「1年中足元が寒く感じる」
「1階と最上階の温度差が大きい」
これらは、住宅に生じるスキマ(気密欠損)が原因かもしれません。
気密・断熱処理が適切に行われていないと、スキマ風だけではなく24時間換気が正常に機能しない原因にもなってしまいます。
今回のNJKブログでは、スキマができやすい箇所や、建てた後にできるリカバリー方法をあわせて紹介します。リカバリーしたい人は工務店と相談する際の参考にしてみてください。
※イエのサプリ編集部では、リカバリーを推奨しているわけではありません。リカバリーをする際は専門家に相談の元、自己責任で実施してください。
目次 [表示させる]
【検証①】スキマができやすい箇所は?
実際にスキマ風による寒さに悩む建売住宅のI邸を例に、スキマができやすい箇所について紹介していきます。
床下からの配管・配線
床下は水まわりに使用する給排水管をはじめ、配管や配線が数多くある場所です。
床下に穴をあけて配管した際にスキマを埋めないと、気密だけではなく断熱も欠損してしまいます。
I邸では、ガスや水道の配管はもちろん、洗濯槽のパン、パイプシャフトなど床下の様々な配管・配線の施工処理が雑だったことが、スキマ風によって床下を冷やす大きな原因となっていました。
気密と合わせて断熱の処理を行わないと、床下から常時外気が侵入してしまい、「暑い・寒い」といった問題の他に「結露」の原因ともなるので、早めの処理が必要になります。
巾木(床と壁の取り合い)
巾木も気密欠損が起きやすい箇所の1つです。
巾木はよく「気密部材」と誤解されがちですが、あくまで「仕上げ材」のため、巾木によって気密性能が上がることはありません。
巾木やクロス、ボードの施工前に床と壁の取り合い部分でしっかり気密処理をする必要があります。
I邸でも巾木部分からのスキマ風が目立っていました。
玄関まわり
框下の部分は気密処理がしにくい部分です。
本来、玄関は気密パッキンを入れ気密層を連続させますが、よく確認すると通気パッキンが使用されている現場も珍しくありません。
通気パッキンを使ってしまうと、外気が入り込み足元が冷える玄関になってしまいます。
I邸では基礎と土台の間に通気パッキンが入っていると考えられ、タイルの目地が切れてしまった部分からスキマ風が入りこんでいました。
コンセントまわり
コンセントも気密層を貫通させて配線するため、スキマ風が入りやすい場所の1つです。
スイッチボックスやコンセントボックスは家に複数あるので、気密性が悪い家ではここから大量のスキマ風が室内に入ることになってしまいます。
窓まわり
窓はその種類や形状によっては断熱性能が弱く、また外気も入りやすい箇所になってしまいます。
例えばアルミは樹脂に比べ約1000倍熱を伝えやすいと言われています。当然アルミサッシが住宅の窓に使用されていれば、そこからの熱欠損は他の部位の比ではありません。
また引き違い窓はその形状からどうしても引き違いの取り合い部分からスキマ風が侵入しやすくなってしまいます。
I邸では
アルミ樹脂の複合サッシが標準で、さらに
引き違い窓が多用されていたため、
窓が温熱環境の大きな弱点となっていました。
小屋裏もきちんとした施工がされていないことで断熱気密欠損が多くなる場所です。
I邸でも断熱材がきれいに敷き詰められずにめくれ上がっていたり、配線まわりも断熱材との間にスキマができ、外気が入りこんでいました。
断熱材がしっかりと一面に敷き詰められ、貫通部の気密層も連続していないと、断熱材の本来の性能が発揮されず、外気温に大きく左右される家になってしまいます。
スキマ風を防ぐには?今後のリカバリーポイント
今回調査したI邸は省令準耐火構造のため、外周からのスキマ風は窓やコンセントまわりを除きほぼありませんでした。
C値も1.4㎠/㎡と、理想とされる1.0㎠/㎡から大きくかけ離れた数値ではありません。
しかし、床まわりに局所的なスキマが集中したことや、床と天井の気流止めが不十分であったことが寒さの大きな原因となっていました。
【対策①】床下のスキマをすべて埋める
床下を通る配管や配線などの貫通部にできたスキマは1液の発泡ウレタンなどでしっかり埋めましょう。
一部分だけ埋めた場合、ほかの塞がれていないスキマから外気が侵入してしまうので、床のすべての配線・配管をリカバリーすることが大切です。
【対策②】気流止めをし、スキマからの外気侵入を防ぐ
床下や天井から侵入したスキマ風はスイッチボックスやコンセントボックス、巾木などを通して室内に流れこんでしまいます。
床下から気密テープでの処理をすることや、小屋裏の間仕切り壁部分にカットした断熱材をつめこむだけでも、外気の侵入が抑えることができます。
コストはかかりますが厚めの断熱材を詰めると、反発力でよりしっかりとスキマを埋めることができ、おすすめです。
【対策③】内窓を設置し、窓の断熱強化をはかる
窓は手を近づけた際に外気を感じるなどスキマ風がひどい場合は調整してもらうよう、まずは工務店に相談してみることをおすすめします。
また既存で取り付けている窓が性能的に弱点になるような種類のものであれば、内窓を設置するというのも1つの方法です。
内窓はホームセンターの材料で自作が可能な簡易的な種類もあれば、業者に取り付けの設置依頼をする種類もあります。
【上図:ホームセンターの材料で自作した簡易的な内窓】
【上図:業者に設置依頼をした内窓】
自宅の窓の種類によって自作するのか、業者に依頼するのか選択しましょう。
お風呂場の窓に内窓を設置するだけで、明らかに体感での暖かさが変わるなど(編集部の体験談)、内窓はかなり有効な断熱の補強手段と言えます。
【検証②】換気システムは正常に機能している?
気密性能が低い家では24時間換気が正常に機能していないことも考えられます。
スキマによる自然換気によって換気経路が崩れたり、24時間換気の種類によっては居室内の換気がきちんと出来ていないという恐れがあります。
I邸でも実際に24時間換気システムの換気量と居室内の二酸化炭素濃度の測定を行いましたので紹介します。
24時間換気システムの換気量を測定
住宅の24時間換気は建築基準法で、1時間あたり家の体積の半分である0.5回の換気が義務づけられています。
I邸の換気回数は0.6回/hと基準をクリアーしていますが、キッチンやお風呂の局所換気を稼働させた場合は0.32回/hと基準を下回ってしまいました。
I邸ではダクトレス式の第3種換気、通称:パイプファンが採用されています。
しかし、パイプファンは力が弱く、風圧に大きく影響されるため、換気量が不安定になりやすいという問題があります。
今回の結果も、キッチンのレンジフードの室内圧(負圧)にパイプファンの力が負けてしまったことが1つの原因と考えられます。
二酸化炭素濃度を測定
居室内の換気が出来ているかどうかは、二酸化炭素濃度計でも判断が可能です。
室内の二酸化炭素濃度の基準は1,000ppmを目安に、これ以下であれば室内の換気がなされており、問題なしと見なします。
実際にI邸の3階寝室にCO2濃度計を1週間設置した結果、かなり高い二酸化炭素濃度が記録されました。
窓を閉めた状態でエアコンを運転していたと思われる4日目には6000ppmを超える結果となっています。
1000ppmを超えてもすぐに健康を害するわけではありませんが、大きく超えた場合は倦怠感や様々な体調不良を引き起こす恐れがあるので注意が必要です。
これもトイレに設置されたパイプファンの力が弱いため、居室内まで換気が行き届いていないことが原因だと考えられます。
計画的な換気を行うためのポイント
I邸では各トイレにパイプファンを使用し、換気量は基準値である0.5回をクリアーしたものの、二酸化炭素濃度の検証により居室内の換気ができていないことがわかりました。
前述したようにパイプファンは力が弱いため、キッチンのレンジフードなど他の強力な換気を回せば換気量が落ち、安定した換気量を保てません。
そのため居室内の空気を引っ張る力がなく、窓やドアを閉め切った状態の寝室ではまったく換気がされないという状況が発生してしまいました。
加えてこの住宅ではスキマが至る所に点在している影響から、換気経路があいまいになる「ショートサーキット現象」も起きていたと考えられます。
いずれにしても計画的な換気ができていないため、室内がしっかり換気できていないと判断でき、汚れた空気や水蒸気が室内に停滞したままだと考えられます。
ではどうすれば計画的な換気が可能になるのか、以下で紹介していきます。
ダクト式の換気を使用する
安定して換気をするためには、換気経路を設計しやすいダクト式がおすすめです。
通常、ダクト式に使用されるモーターはキッチンのレンジフードなどと同じ「シロッコファン」が使用されているので、非常に力があります。
パイプファンのように力で負けて換気量が落ちる心配はほとんど無いため、安定した換気が可能です。
またダクト式では狙った場所の換気ができることもメリットの1つです。
今回のI邸のケースのように排気場所(トイレ)から遠い部屋の寝室でも、ダクトを1本回すことで居室内の換気が可能なので、二酸化炭素濃度が急激に上がるというケースは回避できます。
※ダクト式への変更は住んでからは難しいため、契約前に採用されているかの確認が必要です。
気密性を上げる
スキマからの余計な空気の流出入を止めることで、計画的な換気は可能になります。
このグラフでは気密性能と給気口の関係性を表したものです。
家のスキマ面積が大きくなればなるほど不規則に空気が入り込み、正しい入口である給気口からの給気量の割合が少なくなることがわかります。
例えば、C値5.0㎠/㎡の家のトイレに100㎥/h排気する換気システムが設置してあった場合、本来は給気口から100㎥/h入り設計されたルートを通り排気されます。
しかし、スキマが多い家ではスキマから85㎥/h程度入り、本来の入口である給気口からは15㎥/h程度しか入りません。
また、入ってきた空気も全部排気口から出るわけではなく、近くのスキマからでてしまうこともあります。
給気した空気が計画通りに移動してくれないため、部分的な換気しか行われずトイレであればいつまでも臭いが残ったりこもったりする原因になります。
I邸では冒頭で紹介したようなスキマの箇所を改善することで、合わせて計画的な換気も可能になってくると考えられます。
まとめ|リカバリーで1年中快適な家へ
住んでから「家が寒い」に悩まされる方の相談が最近イエのサプリにも多く寄せられています。
住む前に気密性能を上げることができれば安心ですが、住んでから気づいてしまった場合は当ブログを参考にしてみてください。
気密性能の向上はとにかく不要なスキマを埋めることが大切です。
発泡ウレタンなどで欠損部分を埋めていけば寒さが緩和されることもあります。
自分でリカバリーする前に、まずは一度工務店さんに相談してみることをおすすめします。
また、これから家の購入を検討している方は、ぜひ当ブログで住宅性能や工務店選びについて勉強し、快適で長く住める家の参考にしてみてください。
気密性能の重要性についてもっと学びたい方はこちら
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