【大手ハウスメーカー】気密を意識した鉄骨造の注文住宅を丸裸にしてみた
チャンネル登録をよろしくお願いします!
こんにちは、日本住環境 広報部(イエのサプリ編集部)です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。
間取りの自由度やデザイン性に加えて耐震性も高いことから人気の鉄骨造住宅。
しかし、「気密がとりにくい」「住んでみたら冬場がとても寒かった」といった意見も多く聞きます。
そこで、今回イエのサプリ編集部が訪問したのは大手ハウスメーカーが建てた鉄骨造住宅。
施主のGさんも鉄骨造住宅は気密がとりにくいと知り、施工中も現場に通い、気密テープを使う指示をするなど気密を意識して建てたそうです。
はたして気密を意識した鉄骨造の住宅は本当に高気密なのか?熱交換換気は機能しているのか?
G邸の住宅性能やスキマを徹底調査しました。
目次 [表示させる]
気密を意識した鉄骨造住宅の気密性能(C値)は?
鉄骨造の住宅の弱点といわれる気密性について勉強し、外壁面、天井面、床面は気密シートを入れ、コンセントまわりも気密カバーを使用するなど、できる限りこだわったというGさん。
しかし、気密性能は暫定C値3.8㎠/㎡という結果が出てしまいました。
※今回は住宅内のスキマが多く気密測定器の自動測定が不可能のため手動測定での暫定数値を採用しています。
気密測定をしていなかったというG邸ですが、気密性は実測値なので「高気密」であるかどうかは、気密測定をしていなければわかりません。
そして高気密を謳うのであれば、やはりC値=1.0㎠/㎡以下が望ましいと言えます。
鉄骨造住宅の断熱性能は?
某大手ハウスメーカーの高断熱仕様で建てられたG邸。Gさんは音楽関係の仕事をされており、グランドピアノがある部屋の壁は2重構造、窓も2重窓とすべて防音室になっています。
断熱性については断熱等級5をクリアしており、設計上はある程度の性能を確保できていると思われます。またダクト式の熱交換型換気も1階から3階の各フロアに設置されているなど、寒さ対策はバッチリだと思われていました。
しかし実際に住んでみると、1階の玄関まわりや2階のオーバーハング部分(1階よりも前に張り出しており階下に部屋がない場所)では足元からの強い寒さを感じたというGさん。
住宅内の温度差を確認できる熱画像カメラで、寒さの原因となっている場所を調査しました。
1階ー玄関まわり
玄関まわりは特に温度が低く、ドア部分の最低気温が6℃とかなり冷えているのがわかります。玄関ドアやドア枠は外気と直接触れるため、断熱性能が低いとそこから熱が出入りしてしまいます。
1階ー床点検口
1階の床点検口の内部は特に温度が低く、この冷気が上がってくれば寒さの大きな原因になりそうです。
1階ーエレベーターホール
基礎断熱でウレタンでの気密処理がされているため玄関まわりほど温度差はありませんでした。
1階ートイレ
トイレも居室との温度差ができやすく、ヒートショックを起こしやすい場所です。
やはり1階は全体的に10℃以下の場所が多くありました。
2階ーピアノ室(オーバーハング部分)
足元からの寒さを感じていたという2階ピアノ室のオーバーハング部分ですが、巾木(床と壁の取り合い)部分にスキマの跡が見えます。
熱画像で調査した結果、やはり1階部分は玄関まわりを中心に相当冷気が回っているようでした。
床下の施工に何かしらの問題があると想像でき、続くフォグ試験によってスキマの場所を調査していきます。
【解説】鉄骨造住宅の気密欠損(スキマ)の原因は?
フォグ試験(床下から煙を出してスキマがあるか調べる試験)でG邸のスキマの場所を特定し、気密欠損の原因を調査しました。
【原因①】床まわりの気密層の連続ができていなかった
イエのサプリ編集部では床断熱を採用している住宅(木造・鉄骨)でも、玄関まわりやお風呂まわりは寒くなるのを防止するため、この部分には気密パッキンを使用して部分的に基礎断熱にすることをオススメしています。
G邸は床断熱を採用(エレベーターホール部分は基礎断熱)していますが、布基礎の土台に鉄骨が直接乗っており、土台と鉄骨の間にも気密パッキンは使用されていない仕様でした。
床断熱であればこの仕様でも問題ないと思われがちですが、土台と同じ高さでつくられている玄関については、スキマがあればそこから外気が侵入してしまいます。
G邸も基礎と土台の間にスキマがあり、外気がそのまま流れ込んでいたことが、玄関の寒さの大きな原因となっていました。
【原因②】配管まわりの気密処理ができていなかった
床下を通る配管や配線などの貫通部がすべて気密処理されていなかったことも、1階玄関まわりの寒さの原因となっていました。
特に配管を上階に通す際に設けるパイプシャフト部分は、気密処理をしなければ大きな穴が空いたままの状態です。
さらに床と壁の取り合い部分や、ダウンライトまわりといったスキマができやすい箇所からも外気が侵入していたと考えられます。
G邸は床断熱なので床下は外と変わらない空間ですが、床下の配管・配線といった貫通部のいたるところにスキマが点在しています。これらのスキマから侵入した外気がPF管を伝い分電盤内へ侵入し、室内へ冷気を届けていたことがフォグ試験によって判明しました。
ちなみにGさんが気密性の大きな弱点として考えられていたエレベーターホール部ですが、玄関まわりにスキマが集中していた影響か、フォグ試験ではこの部分からの漏気は確認できませんでした。
【寒さ対策!】スキマ風を防ぐ・気密性を上げる施工方法
調査の結果、G邸では特に床まわりの気密性が悪かったことで1階の床全体が冷やされてしまっていたことがわかりました。
この寒さ対策には外気を住宅内に入り込ませないこと、つまり気密性を上げることが重要です。
ここからはG邸を参考に気密性能を上げる方法について紹介していきます。
※イエのサプリ編集部では、リカバリーを推奨しているわけではありません。リカバリーをする際は専門家に相談の元、自己責任で実施してください。
配管・配線・パイプシャフトまわり
※画像は別の現場
床下を通る配管や配線などの貫通部にできたスキマは1液の発泡ウレタンなどでしっかり埋めましょう。
一つ一つのスキマは小さく見えても、数が多ければそれだけ大きなスキマになってしまいます。
一部分だけ埋めた場合、ほかの塞がれていないスキマから外気が侵入してしまうので、すべての配線・配管を埋める必要があります。
分電盤周辺
※画像は取り付けイメージ
分電盤周辺にはCD管が多く集中していますが、CD管のスキマは気密テープを巻くと後から抜けなくなってしまうトラブルもあります。
建築中であれば配線部分に厚物のパッキンを巻いて入れることで、後からでも取り外しがしやすく気密性もしっかりとれるのでおすすめです。
※分電盤内の改修は国家資格が必要です。火災や感電の危険があるため補修する際は必ず専門の業者に依頼してください。
玄関の上がり框下
本来であれば基礎空間から気密テープ等で処理することがベストですが、仕上げ面でも透明なコーキング剤でスキマを埋めれば、目立たずにスキマ風の侵入を改善することができます。
基礎と土台の部分
※画像は別の現場(玄関ではない)
基礎と土台の間の部分はコーキングや1液発泡ウレタンではなく気密テープがおすすめです。
気密テープでスキマをすべて覆っていき、画像のようにL字に折れた部分までしっかりと気密テープを貼り付けることがポイントです。
特にL字に張り付ける部分は専用のヘラやローラーを使い、しっかりと圧着させてください。
スキマの多い鉄骨造住宅で24時間換気は機能している?
前述の調査で、住宅内のいたるところにスキマがあることが判明したG邸。
このように気密性能が悪い住宅では、スキマ風による寒さだけではなく居室内の換気が正常に機能していない恐れがあります。
実際に24時間換気システム(第1種熱交換換気)の換気量と、居室内の二酸化炭素濃度を測定し調査しました。
24時間換気システムの換気量を測定
住宅の24時間換気は建築基準法で、1時間あたり家の体積の半分である0.5回の換気が義務づけられています。
しかし、G邸の熱交換型換気では給気・排気ともに換気回数が基準の0.5回を満たしていませんでした。さらに給気0.33回/h、排気0.12回/h と、給排気のバランスが大きく崩れています。
一見、換気システムは機能していないように見えますが居室内はしっかりと換気できているのでしょうか。次の二酸化炭素濃度測定の結果を見てみましょう。
二酸化炭素濃度を測定
室内の二酸化炭素濃度の基準は1,000ppmを目安に、これ以下であれば室内の換気がなされており、問題なしと見なします。
結果はどの居室内も1,000ppmを超えておらず、換気は全く問題ありませんでした。
居室内は正常に換気されていると言えるでしょう。
※寝室では1,000ppmに達する時間がいくつかありますが、就寝のタイミングと考えられるためこの程度なら許容範囲です。
では、熱交換型換気システムがあまり機能していないにもかかわらず、どうして居室内の換気はできているのでしょうか?
その理由を以下で解説していきます。
【解説】気密欠損(スキマ)が起こす計画換気の不調
給排気のバランスが大きく崩れていたG邸ですが、その大きな原因は給気された空気の一部が排気口ではなく住宅のスキマから自然に押し出されたからだと考えられます。
G邸は暫定C値3.8㎠/㎡と、いたるところにスキマがありました。
このスキマが自然排気口の役割を果たすことで、第1種換気(機械給気・機械排気)を採用しているにもかかわらず、機械給気と自然排気が行われる第2種換気のような動きをしていたと予測されます。
その結果、G邸では換気回数基準0.5回をクリアしていないにもかかわらず、どの居室内においても二酸化炭素濃度は1,000ppmを超えていない状態で、換気ができていたと考えられます。
第1種換気は機械による給排気で安定的な換気ができることがメリットですが、気密欠損のある住宅ではこのように第2種換気のような動きに変わってしまうことがあります。
計画通りに換気できなければ、住宅内の壁内結露にもつながってしまいます。さらには化学物質(ホルムアルデヒドなど)やダニ、カビ、ハウスダストなどによるシックハウス症候群を引き起こす原因にもなり、住宅にも人にも良くありません。
スキマからの余計な空気の流出入を止めることで計画的な換気は可能になるため、しっかり気密処理をすることが大切です。
※スキマは原因の1つで、ほかにもダクトの圧損・本体のメンテナンス不足や不調・換気経路など複合的な要因で給排気のバランスが崩れている可能性があります。
また、換気システムは1年に1回程度のメンテナンスやクリーニングを推奨しているものでも、さらにこまめな手入れをおすすめします。
特に引っ越し作業では大量のほこりがでるため、イエのサプリ編集部では引っ越し後1、2か月の間に必ず1回はメンテナンスやクリーニングを行うことを推奨しています。
まとめ|鉄骨造で高気密住宅を建てるためには
鉄骨造住宅は木造住宅と比べ気密がとりにくいものの、ポイントをしっかり押さえれば高気密にすることもできます。
これから鉄骨造で家を建てる方はC値や気密測定の実施を約束してくれる工務店を選ぶことが重要です。
さらに、施主側も住宅性能などについての勉強が必要になってきます。
ぜひ当ブログを高断熱高気密住宅を建てる上での参考にしてみてください。
鉄骨造で気密をとる際の注意点についてもっと学びたい方はこちら
【大手ハウスメーカー】気密を意識した鉄骨造の注文住宅が寒い理由…鉄骨造は気密が取れない?