【ローコストの闇】1600万の注文住宅を丸裸にしてみた
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こんにちは、日本住環境 広報部(イエのサプリ編集部)です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。
無理のない予算で家づくりができることから人気のローコスト住宅。
キッチンなどこだわりたい部分だけオプションを追加し、グレードの高い設備にするなど、カスタマイズできることも魅力の一つです。
しかしコストが安い分『最低限の断熱材しか入っていない』、『気密施工が全くできていない』など、温熱環境でのトラブルも多くみられます。
今回のNJKブログでは、地域工務店で建てたローコスト住宅を訪問。
施主のOさんは契約後から家づくりについて学び「高気密高断熱住宅」
を建てたいと考えました。
しかし工務店に対して気密施工の要望を伝えたところ、ほとんどの施工を『やったことがない』と断られてしまったそうです。
高性能化できなかったローコスト住宅の実際の性能はどうなっているのでしょうか?
そんな中でもやってよかったおすすめの仕様なども詳しく伺ったので、ローコスト住宅を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
目次 [表示させる]
【C値2.0㎠/㎡】ローコスト住宅の住宅性能を調査
地域工務店が売りに出していた土地が立地も理想的だったため、仕様を確認せずそのまますぐに契約してしまったというOさん。
気密性能や断熱性能といった住宅性能について学びはじめたのも契約後からだったそうです。
性能面で不安を覚え、改めて契約した工務店の標準仕様を確認しましたが、気密測定や断熱材の追加などは工務店に断られ、望むような高気密高断熱仕様にはできませんでした。
少しでも住宅性能を高めるため、工務店の提示するオプションの範囲内で仕様変更をしましたが、取材時の気密測定でC値1.0㎠/㎡を切ることができませんでした。
それでは、O邸のどのような場所にスキマや弱点があるのでしょうか?
実際の住宅性能を詳しく調査してみました。
高性能化できなかったローコスト住宅の弱点を特定
煙を出すフォグマシーンでスキマ風を可視化する検証や、居室内の温度差を測る熱画像カメラ、スキマ風を発見できる風速計で住宅内を調査しました。
1F-キッチン
ビルドイン型の食洗器はキッチン上のスペースが広々と使えることで人気です。
しかし、シンク下に配管を通すため気密処理がされていないと大きなスキマができてしまいます。
熱画像カメラで確認しても、床のキワ部分が青くなっているのがわかります。
キッチンの下に潜ったところ、床下を通る配管や配線などの貫通部がすべて気密処理されていませんでした。
キッチンの足元にはガスや水道、排水などの配管が数多く通っています。
床に穴を空けて配線するため、空いた部分の断熱気密処理が適切に行われていないと、床下から冷気がどんどん侵入して足元が冷やされてしまいます。
配管の部分に1液の発泡ウレタンを吹くことで、ここからのスキマ風は軽減できるのでオススメです。
1F-玄関
巾木(床と壁の取り合い)からスキマ風が入り込んでいました。
巾木はよく「気密部材」と誤解されがちですが、あくまで「仕上げ材」のため、巾木によって気密性能が上がることはありません。
熱画像カメラでも巾木の部分が青くなっており、温度が低いことがわかります。
仕上げ材を施工する前に床と壁の取り合い部分でしっかり気密処理をする必要があります。
玄関は基礎と上がり框の接合部分には気密パッキンを入れ断熱気密層を連続させますが、通気パッキンが使用されているようです。
通気パッキンを使ってしまうと、外気が入り込み足元が冷える玄関になってしまいます。
1F-リビング
建具(扉)のまわりもスキマができやすい場所です。
このようなスキマができてしまった場合はコーキングなどでしっかり埋めるようにしましょう。
2F-脱衣所
洗濯機の上からもわずかですがスキマ風を確認でき、1階から2階まで全体的に外気が回ってしまっていることがわかります。
2F-脱衣所-分電盤まわり
床下の配管がすべて未処理のため、これらのスキマから侵入した外気がPF管を伝い分電盤内へ侵入し、室内へ冷気を届けているようです。
2F-脱衣所-乾燥機まわり
断熱ダクトの配管とプラスチックプレートの間にスキマができていましたが、1液の発泡ウレタンで簡単にリカバリーできる部分でした。
この部分は後日、Oさんがリカバリーを行いました。
ガス乾燥機はエアコンと同じく設置時に配管部分をくり抜くため、断熱気密欠損が起こりやすい部分です。
後付けの施工ではなく、建築中に先行配管をすることがおすすめです。
2F-子供部屋-天井点検口
O邸は屋根断熱のため天井点検口では気密をとる必要はありません。
しかしO邸は床下の配管がすべて未処理なうえにスキマが多く、階間や小屋裏にも外気がまわってしまっていました。外皮の気密層を確立し、スキマ風を防ぐ必要があります。
このスキマは何?家を長持ちさせる防蟻対策
床下を覗いた際にOさんが気になったというこちらの穴。
建築中にまだ家屋が建てられていない場合、雨水が溜まらないように水抜き穴があけられます。
この穴が建築後も防蟻処理されず空いたままだと、シロアリが入り込む原因になってしまいます。
防蟻対策の観点から、水抜き穴が塞がれていない場合は処理することをおすすめします。
この部分は後日、 Oさんが防蟻ウレタンにより気密処理を行いました。
防蟻ウレタンはホームセンターなどで入手することができます。
ローコスト住宅の24時間換気は機能している?
Oさんは24時間換気システムについてはダクト式換気を希望していましたが、工務店に断られてしまい第3種ダクトレス換気=パイプファンを採用しています。
換気がきちんと行われているか調査するため、2階の寝室にCO2濃度を測定するセンサーを1週間設置し計測しました。
室内の二酸化炭素濃度の基準は1,000ppmを目安に、これ以下であれば室内の換気がなされており、問題なしと見なします。
ローコスト住宅での寝室のCO2濃度
測定の結果、毎日就寝のタイミングで2,000ppmを超えてしまっており、効果的な換気ができていませんでした。
やむを得ずパイプファンを採用したO邸では少しでも換気量を安定させるため、1階、2階の各トイレとお風呂以外に、シューズクローゼット、ウォークインクローゼットにも24時間換気(パイプファン)を追加設置しています。
この2か所の24時間換気も運転すればCO2濃度を改善することができそうです。
第3種ダクトレス式(パイプファン)の換気量を調べてみた
風量測定器を使って、シューズクローゼットのパイプファンの換気量を調査してみました。
このパイプファンの設計換気量は64㎥/hですが、測定時は平均で36~37㎥/hと半分程度の換気量になっています。
原因はパイプファンで排気する力よりも逆風で押し戻す力が強く、押し戻されてしまったからです。測定した日は平均風速5.5m/sと強い風が吹いていました。※風速5m/sがおよそ砂埃や枯葉が舞い上がってしまう風速
さらに強い逆風が吹くと、換気量は約24㎥/hまで下がってしまいました。
パイプファンの逆流によって室内に砂埃が入り込んでいましたが、後日シャッター付きのパイプファンに変更しています。
このようにパイプファンはパワーが弱く、風の影響を受けやすいため安定した換気量を保てません。
(Oさんが当初採用しようと考えていた)ダクト式換気であれば換気量があるため、狙った場所の換気がしっかりとできます。
住んでからダクト式への変更は難しいため、家を契約する前に情報収集し、工務店と相談のうえで納得できる換気システムを選びましょう。
ローコスト住宅でやってよかった仕様3選
契約した工務店では基本的な性能の変更ができず、希望する高性能化ができなかったO邸。
その中でOさんが工務店と交渉し、仕様変更してよかったことを紹介します。
窓をすべてオール樹脂サッシに変更
樹脂はアルミの約1000倍もの断熱性能を持っており、オール樹脂サッシにすることで窓から出入りする熱を大幅に減らします。室内との温度差を軽減し、さらに結露の発生を抑制できます。
外壁と屋根の色を白色にし遮熱性UP
屋根の断熱材の厚さを変更できなかったため、外壁と仕上げ材の色を遮熱性の高い白色にすることで、夏場の厚さ対策をしています。
壁の断熱材を100mmに変更
壁の断熱材の厚さを工務店のオプションで最大の100mmに変更することで、断熱性能をあげています。
高気密高断熱を目指す方向け!契約前に確認するべき3つのポイント
今回のO邸のように契約後に施主側が高性能化や施工方法に対して要望を出しても、高額なオプション料金がかかってしまったり、希望する施工自体を断られたりする場合があります。
特に、ローコスト住宅では基礎的な住宅性能や仕様がある程度決められており、施主の希望した住宅性能へのグレードアップが難しい場合があります。
必ず契約前に工務店に以下のことをヒアリングしておきましょう。
工務店にC値1.0㎠/㎡を下まわることを約束してもらう
C値1.0㎠/㎡以上の数値を高気密と考えている工務店もあります。
展示会やHPで高気密をアピールしていても「平均的なC値はどのくらいですか?」と確認することが大切です。
C値の目標数値を約束した場合は、約束したことを必ず書面上に記載してください。
書面として残っていれば、工務店やハウスメーカー側に改修を求めることができます。
契約前に中間・完成時の気密測定を行ってもらえるか確認する
気密測定は高気密高断熱を謳っている工務店であっても実施していない場合があるので必ず確認しましょう。
また、壁紙やクロスが張られた後の完成気密測定では、結果が悪くてもスキマの特定が難しく、直すために壁紙やクロスを剥がさなければいけません。
完成気密測定はあくまで最終チェックと考え、気密層ができたタイミングの中間気密測定を実施し、スキマの有無を確認しましょう。
工務店の構造見学会・宿泊体験等に参加する
工務店の主催する構造見学会や宿泊体験会に参加するのもオススメです。
構造見学会は建築途中の物件の内覧会のようなもので、どのような施工をしているか、工務店の技術レベルを確認できます。
構造見学会で見るべきポイントについてはこのブログを参照してください。
おすすめの関連記事
また宿泊体験会では工務店の建てた物件に宿泊することができます。
宿泊することで実際の温熱環境などがわかるので、自分にとって快適かどうかリアルに体験することができます。
工務店が構造見学会や宿泊体験会を開催しているようであれば積極的に参加してみるのも良いかと思います。
まとめ|契約前に注意するべきポイント
快適に暮らせる住宅性能を備えるため、ローコスト住宅購入の際は望むような仕様変更が可能かどうかを必ず確認するようにしましょう。
イエのサプリ編集部がこれまでお邪魔してきたお住まいでも、断熱・気密の知識がないまま家づくりをしてしまい、実際の温熱環境に後悔されている方が一定数います。
ローコストで高断熱高気密住宅を建てるには施主側の勉強も大切になり、住宅性能について正しい知識を持つことが、満足のいく家づくりの第一歩となります。
これから家づくりを検討する方は、ぜひ他のブログやYouTubeチャンネルを参考にしてみてください。
ローコスト住宅を建てるうえでの注意点についてもっと学びたい方はこちら
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