【高気密高断熱だけ追求した結果・・・後悔?忘れがちな○○】
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こんにちは、日本住環境 広報部(イエのサプリ編集部)です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。
高気密高断熱住宅を建てる際には結露対策が必要です。
結露対策が不十分だと、せっかく高気密高断熱住宅を建てても、壁内にカビが発生したり住宅の耐久性が著しく低下したりといったトラブルの恐れがあります。
室内から発生する湿気は断熱材の内側に張られた防湿気密シートで防ぎ、また外側には通気層をつくり、断熱層に入った湿気や水蒸気を逃がすことが大切です。
この考え方を「内気密・外開放」といい、高気密高断熱住宅の結露対策として有効と考えられています。
今回のブログでは内気密・外開放の「外開放」について詳しく解説していきます。
高気密高断熱住宅を建てたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次 [表示させる]
「内気密・外開放」とは?換気の重要性
「内気密・外開放」の「内気密」とは住宅の内側で気密をとり断熱材の補完をすること、つまり「高気密高断熱工法」を指します。
「外開放」とは住宅の外側で通気をとり壁体内の換気をする「外壁通気層工法」を指します。
通気層は断熱層に入ってしまった水蒸気を住宅の外へ逃がす役割があります。
水蒸気が断熱層に停滞したままだとやがて温度差が発生し、結露の原因となる恐れがあります。
どんなに高気密高断熱な住宅でも通気層がしっかり確立していなければ、結露によるカビや外壁の劣化などの住宅トラブルが起こりやすくなってしまいます。
1年中快適かつ長く暮らせる住宅を建てるためには「内気密(高気密高断熱工法)」と「外開放(外壁通気層工法)」のどちらも大切です。
次の章からは「外壁通気層工法」について詳しく解説していきます。
「外壁通気層工法」とは?
外壁通気層工法とは、外壁と構造躯体の間に空気の通り道となる通気層をつくり、断熱材に湿度・湿気を溜めない工法のことです。
外壁から浸入した雨水や壁体内の湿気が通気層を通して外部に排出されることで、構造材や下地材の腐朽や劣化を防ぐことができます。
「外壁通気層工法」が誕生するまで
外壁通気層工法は1980年代に北海道の寒冷地住宅の研究からスタートしました。
実は外壁通気層工法だけではなく、高気密高断熱工法もここの研究から生まれています。
この研究が実施されるに至った詳しい経緯については、下記のブログを参照ください。
住宅性能と断熱材の歴史!高気密住宅ができるまで
1990年ごろは通気層をつくらず防水シートの上に直接外壁を張る「直張り工法」が採用されていました。
しかし、直張りになるため屋内から出た水蒸気を排出できず、カビが生えてしまったり、溜まった湿気が外に出ようと動くせいで外壁が剝がれてしまったりと様々な不具合が出てしまったのです。
それにより2000年以降は、通気層をつくる外壁通気工法が普及し、ほとんどのハウスメーカーや工務店が採用しています。
【断熱気密ライン別】通気層の役割と仕組みを解説!
断熱気密ラインとは、住宅の壁内にある断熱層と気密層のことで、外気との境界線のことです。そのため、断熱気密ラインは床・壁・天井まで途切れず連続させることが重要です。
前述の通り、高気密高断熱住宅を長持ちさせるためには「通気層」の確立が必要です。
ここからは各断熱気密ライン別に、通気層の役割と仕組みを解説していきます。
【壁(充填)断熱】通気層
壁の断熱方法は様々な工法がありますが、ここでは代表的な壁充填断熱の際の通気層の役割と仕組みを解説していきます。
充填断熱の場合、下図のように断熱気密層の外側に通気層があります。
室内から発生した水蒸気が万が一断熱層に侵入した場合、通気層から速やかに排出できます。
通気層は外壁の土台水切りの部分や、軒にある有孔ボードなどを入口に空気が入り、出口となる棟換気から抜けていくという仕組みが一般的です。
【床断熱】通気層
床断熱では壁と同じように床面から気密層(気密シートや剛床など)、断熱層と続き、その下に床下空間があり、ここはしっかり換気しなければいけません。
ここで通気層の役割を果たすのが通気パッキンです。
土台の木材とコンクリートの間に通気パッキンを使用することで、床下の空気が縦横無尽に動き、換気ができるようになります。
【基礎断熱】通気層
基礎断熱では、基礎内断熱と基礎外断熱のどちらかを選ぶことになります。
寒冷地以外では、シロアリが断熱材に道をつくり、家に侵入するリスクがあるため、基礎内断熱を採用するケースが多いです。
基礎内断熱では基礎のコンクリート部分に断熱材を圧着させます。
断熱材より外側に空間がないため、建築時に2~3週間ほどの養生期間を設けて基礎部分をしっかりと乾燥させます。
この工程の後に基礎と断熱材と圧着させ、断熱材に侵入する湿気を防ぎます。
また、この際土台には気密パッキンを使用し、床と壁の気密を連続させることが必要になります。
【天井断熱】通気層
天井断熱では床面と同じように天井面から気密層、断熱層と続き、その上に小屋裏空間があり、ここはしっかり換気しなければいけません。これを通称:小屋裏換気と呼びます。
小屋裏換気の手段の1つが軒裏換気(軒天換気)です。
住宅の軒裏を見上げると、穴が一定間隔で開いたボード(有孔ボード)や換気部材を目にする場合がありますが、それらは軒裏換気(軒天換気)のための部材です。
また屋根の頂上部に設置される棟換気も小屋裏換気の1つです。
湿った暑い空気は上へ登り、小屋裏空間に滞留しがちです。
住宅の最長部である屋根に棟換気を設置することで、小屋裏の暑い空気を効果的に外に排出することができます。
【屋根断熱】通気層
屋根断熱は前述の小屋裏空間が断熱気密層の内側となり、室内と同じ扱いになります。
そのため、壁の構成と同様に気密層、断熱層の外側に通気層が必要になります。
通気層は土台水切りや軒を空気の入口とし、棟を出口として抜ける仕組みが理想的です。
この時注意する点は、棟換気を設置しないことで発生しうる空気の停滞です。
空気の出入口を軒・軒にした場合、強風時でないと空気が抜けにくい場合があります。
暖められた空気が出口から抜けずに野地板付近に停滞し、屋根部分の結露につながってしまいます。
また壁の通気層は18㎜から21㎜程度というのが一般的ですが、屋根の通気層は30㎜以上が必要になるため、しっかり確保して施工する必要があります。
通気層がないと起こりうる住宅トラブル3点
実は住宅事故の中でも防水事故は約95%を占めています。
躯体に起きた雨漏りなどの防水事故は認められれば、工務店が加入している瑕疵担保責任保険によって改修費の一部などの補償を受けることができます。
しかし、結露による水濡れや天井のシミ、カビは保険の対象外となり、改修費用は施主側が支払わなければいけません。
ここでは通気層がないことで発生する「結露」によるトラブル事例について解説します。
①結露による天井のシミや漏水の発生
小屋裏換気や通気層がなく換気不足になると、水蒸気が躯体内にいつまでも停滞してしまい結露の原因となります。
例えば暑い空気が滞留しやすい小屋裏空間で通気層がない場合などは注意が必要です。
小屋裏で発生した結露が断熱材を濡らし、断熱効果を低下させるばかりか、放置した結露水が天井面のクロスを濡らしてシミになるケースもあります。
また多くは無いですが、結露水が小屋裏内でプール状態になり、天井面で漏水するケースもあります。
雨漏りと勘違いしていたら結露だったというケースでは、瑕疵担保責任保険が適応されずに費用面でも大掛かりな改修工事が必要となってしまうこともあります。
②結露による腐朽菌やシロアリの発生
結露によるトラブルでさらに怖いのは、建材を腐らせる腐朽菌や建材を食べるシロアリの繁殖です。
どちらかだけでも繁殖してしまうと家の耐久性や耐震性が著しく低下し、耐震等級3の家でも地震で倒壊する恐れがあります。
どちらも発生を促すのは「水分」という共通点があるので、木材を湿潤状態にしないための対策として、通気層が必要になります。
③結露による外壁の変色
通気層の不具合事例で多いのが外壁の変色で、特に注意すべきは窓枠まわりです。
窓枠の下には通気胴縁を設置しますが、その際に窓枠にぴったりくっつけると、下(土台水切り)から入ってきた空気が出口を失いそこに停滞してしまいます。
その結果、窓枠まわりの劣化や変色などのトラブルが発生するため注意が必要です。
窓枠の周りの通気胴縁はぴったり設置せずに、空気が横へ移動できる間隔をつくることが重要です。
外壁通気層工法で長持ちする家を建てるには?
外壁通気層工法は多くの工務店で採用されていますが、過信はせず必ず仕様を確認しましょう。
契約前に気密や断熱など温熱環境の仕様と同じように、通気部材の設置位置といった劣化対策の仕様も確認することをお勧めします。
長期優良住宅に対応しているかどうかを確認する
ハウスメーカーや工務店を選ぶ際には「長期優良住宅基準」対応かどうかを確認しましょう。
長期優良住宅とは、国が定めた「長期優良住宅認定制度」の基準をクリアし、認定を受けている住宅のことで、この認定を受ける際の要件に「劣化対策等級3相当」があります。
その要件では外壁に通気層を設けるなどの規定があるため、長期優良住宅においては外壁通気層工法を採用している仕様が多くなっています。
ただし、長期優良住宅を建てる工務店が必ずしも適切な外壁通気層工法を行っているとは限らないため、必ず工務店に仕様を確認するか、次項のように自分の目で見て確認することが重要です。
構造見学会で通気層を確認する
仕様の確認だけでは安心できないという方は、契約する工務店の施工精度を確認する意味も込めて、構造見学会に参加することをお勧めします。
外壁通気層工法に関わる必要な部材がしっかり付けられているか、窓周りの通気胴縁がピッタリとくっついていないかなどは目で確認するしかありません。
見るべきポイントついては、下記のブログも併せてご参照ください。
防水対策や通気層がないと家が腐る!外壁の劣化やカビを防ぐ施工のポイント
まとめ|快適で長持ちする家には「内気密・外開放」が不可欠!
近年、住宅性能への意識が高まり高気密高断熱住宅を建てたいという方が増えています。
しかし、住宅の温熱環境を向上する「高気密高断熱」という考え方が普及していく反面、劣化対策である「外壁通気層工法」の重要性についてはまだまだ認知度が低いのが現状です。
性能の良い住宅を長持ちさせるためには「外開放(外壁通気層工法)」が不可欠です。
家づくりの際はぜひ「内気密」と「外開放」はセットで考えてみてください。
通気層工法についてもっと学びたい方はこちら
高気密高断熱と通気層工法で劣化しない家づくりを学ぶ【切り抜き】