【注文住宅】壁断熱でミスしやすいポイント
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こんにちは、日本住環境 広報部(イエのサプリ編集部)です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。
住宅を建てる際に使用する断熱材にはそれぞれ特徴がありますが、どれが一番高気密住宅に適しているのでしょうか。
今回のブログではよく使われる断熱材を「壁面」での使用に注目して比較しました。使用する際の断熱気密の注意点や、施工ミスが起こりやすいポイントについても詳しく紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次 [表示させる]
【断熱気密のポイント】袋入り断熱材を使う場合
袋入り断熱材とはその名の通り袋に入った断熱材で、関東から以西の割と温暖な地域で流通している断熱材になります。
高気密高断熱が盛んな寒冷地では裸の繊維系断熱材+別張りの気密シートで断熱気密をとるパターンが多いですが、袋入り断熱材は表面のシート部分が気密シートの役割を果たし、簡易的に断熱気密がとれることで人気な断熱材です。
では袋入り断熱材を使用する場合どんな点に注意するべきかを見ていきます。
袋入り断熱材は端部をきちんとテープ処理をする
袋入り断熱材で注意したいのは「袋入り断熱材は袋の耳と耳をあわせて石こうボードで押さえれば大丈夫」と言われる点です。
このような方法は、繊維系断熱材を痛めず補完するための防露措置としては有効ですが、気密措置としての効果はあまり期待できません。
実際には石こうボードで押さえるのではなく、写真のように接合する袋の耳をタッカー留めし気密テープですべて処理していく必要があります。
筋交い部分なども、その形に合わせて丁寧に処理していく必要があり、決して簡易的に断熱気密が取れる部材とは言い難い点には注意が必要です。
このような一手間を加えてはじめて袋入り断熱材で気密が取れると言えます。
袋入り断熱材の注意点①取り合い部
袋入り断熱材でよくある失敗例が「壁と床との取り合い部」や、「壁との取り合い部」で気密テープ処理をしていないことによる気密欠損です。
上の写真のように袋入り断熱材の袋と袋の重なる部分をタッカー留めしているだけの不十分な施工が多くみられます。また、壁や床の取り合い部は袋がめくれてそのままの状態になっていますが、この施工では気密性能に期待はできません。
上記の壁との取り合い部分、袋入り断熱材との取り合い部分はタッカー留めした後に必ず気密テープで処理をしましょう。
また床との取り合い部は袋入り断熱材の袋を30㎜ほど残してカットし、袋と床面を綺麗にテープ処理する必要があります。
袋入り断熱材の注意点②配管・配線部分
上の写真も同様の理由で全体的にテープ処理が不十分な上、こちらでは配線部分もテープ処理がされていません。
また配線部分は断熱材を無理やり押し込んでいる形になっており、この部分は気密だけではなく断熱欠損になってしまう点に注意しましょう。
断熱材を無理やりぐちゃぐちゃと詰め込むと断熱性能が46%程度しか発揮されないというデータもあります。
どれだけ高性能な断熱材を入れても、正しい処理をしなければ半分以下の性能しか発揮されないため、気密施工と合わせて断熱施工も丁寧に行いましょう。
【断熱気密のポイント】ウレタンを使う場合
現場発泡ウレタン断熱材は、液体の断熱材を壁面に霧状に吹き付け、そこから発泡して膨らんで固まる仕組みの断熱材です。
一般的に現場発泡ウレタン断熱材の施工は、建材の間にスキマなく充填することで気密性を確保しやすいと言われています。
簡易的に、また比較的安価に気密を取れることでも人気な部材です。
では現場発泡ウレタン断熱材を使用する場合どんな点に注意するべきかを見ていきます。
気密シートの注意点①施工精度
現場発泡ウレタン断熱材は断熱施工と気密施工が同時にできるという謳い文句を見かけます。
気密処理にあまり慣れていない工務店で家を建てる場合、袋入り断熱材のように細かくテープ処理をしていくよりも、吹き付けるだけで断熱も気密もとれる現場発泡ウレタン断熱材の方がいいのではないかという意見も散見されます。
現場発泡ウレタン断熱材であっても断熱気密をすべきポイントは、床・壁・天井の取り合い部や配管部分など袋入り断熱材と同様です。
スキマを埋める気密工事としては有効である一方、気密が「取れる」ではなく、あくまで「取りやすい」という点は注意しておく必要があります。
吹き付けウレタン断熱は絶対に高気密になる?結論:気密性が低くなるケースもあります【Q&A】
慣れている施工業者であればC値=1.0㎠/㎡以下も可能で、0.5㎠/㎡程度の気密性能を出すことも可能です。
一方、現場発泡ウレタン断熱材を使用していても施工に慣れていない業者であればC値=2.0㎠/㎡を超えるような現場もざらにあります。
気密性能が落ちるケースとして良くあるのが、例えば住宅の構造が複雑化するような下屋の部分です。
目視で見えずに、手を伸ばして施工する必要がある部分などはきちんと吹けていない場合があるので注意が必要です。
また吹き付けるべき場所を把握していない、単純な吹き忘れのケースもある他、現場発泡ウレタン断熱材は吹き付けた場所から膨らむ習性をもっているので、スキマを残したままウレタンで覆われてしまい、そのまま断熱気密欠損となるケースもあります。
このように現場発泡ウレタン断熱材による高気密高断熱化は施工業者の腕次第になる点は考慮すべきポイントです。
現場発泡ウレタン断熱材の注意点②地震
気密テープや気密シートなどの気密部材は、木の伸縮・膨張に対し追従する性質があります。
倒壊するような地震でない限り、気密テープや気密シートが破れてスキマができることはほとんどありません。
しかし、現場発泡ウレタン断熱材は吹き付け後に硬化するため、追従する性質を持っていません。
地震により建物が動いた際に硬化した現場発泡ウレタン断熱材が割れてしまうケースもあるなど、柱や梁への追従性の面で気密シート等と比べて低いという点は注意が必要です。
割れたところはそのままスキマになってしまうため、地震によって知らない内に家の気密性能が落ちてしまうリスクがあります。
実際にイエのサプリ編集部が訪問した仙台市のお宅を気密測定したところ、築年後、数度の地震の後に気密性能が劣化しているケースがありました。
詳しく検証したところ、現場発泡ウレタンのみで施工した部分からスキマ風を確認しました。
詳しくはこちらのブログ
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現場発泡ウレタン断熱材は地震によって劣化するケースがあることを注意してください。
【断熱気密のポイント】裸の繊維系断熱材+気密シートを使う場合
裸の繊維系断熱材+別張りの気密シートは前述したように寒冷地での高気密高断熱化のオーソドックスな工法です。
一方、裸の繊維系断熱材の流通自体が本州では少ないため、本州の方はあまり見かけない工法かもしれません。
この工法の良い点はなんといっても気密シートによって気密が取りやすい点と言えるでしょう。
では裸の繊維系断熱材+別張りの気密シートを使用すれば安心なのか、どんな点に注意するべきかを見ていきます。
裸の繊維系断熱材+別張りの気密シートの注意点①施工精度
裸の繊維系断熱材+別張りの気密シートを使用したとしても、施工が雑では当然意味がありません。
気密シートはシワやたるみをつくらないように張った上で、気密シート同士の重ね合わせは気密テープで連続させる必要があります。
上記のように気密シートをぐちゃぐちゃに張った施工では、スキマ風が侵入してしまいます。
またここまで見てきた他の工法と同様、配管周りも専用の気密部材を使うなどして気密層の連続を行う必要がありますが、この現場では全くできていません。
繊維系断熱材もスキマなく充填する必要があります。
気密シートや気密テープで丁寧に施工していたとしても、断熱材がきちんと施工されていない場所は断熱欠損となってしまいます。
ここまで見てきたような施工では、どんなに良い断熱材や気密部材を使用していても、性能を発揮することはできません。
断熱気密性能が低いと、暑さや寒さの原因になるだけでなく、内部結露の恐れ、換気がきちんと機能しないなど別の問題も発生する恐れがあります。
詳しくはこちらのブログを参照ください。
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高気密高断熱にしようと思って採用した断熱材、気密部材がきちんと施工されているかは、契約した工務店の施工精度次第だという点は留意しましょう。
裸の繊維系断熱材+別張りの気密シートの注意点②気密シートの厚み
現場での施工中は思わぬトラブルで気密シートが破れてしまうケースもあります。
塞がずにそのままにすれば気密欠損となるばかりか、シートの自重でどんどん下がって穴が広がってしまう恐れもあります。
穴が空いてしまった際は、写真のように気密テープ等ですぐに補修すれば問題ありません。
また、ここで気にしたいポイントは気密シートの厚みになります。
厚みが100μ(約0.1㎜)以下の気密シートはタッカーを打った後に少し引っ張るだけで穴が広がりやすいため注意しましょう。
※袋入り断熱材のシート部分の厚みは20μ〜60μ(約0.02㎜〜0.06㎜)
気密シートの厚みは適度に厚さと重みがあり、耐久性がある200μ(約0.2㎜)以上がおすすめです。
裸の繊維系断熱材+別張りの気密シートの注意点③気密専用の部材でないもの
気密シートのような気密部材ではないものが使われている場合も注意が必要です。
例えば、気密シートの代わりに農業用ポリシート(通称:農ポリ)を使っている、気密テープの代わりに養生テープを使用しているような現場(上の写真)です。
これらは気密専用の部材よりも安価ではありますが、耐久性が低くわずか数年で気密性能が悪化する原因になってしまいます。
せっかく気密施工がされていても専用の部材でなければ十分な気密性能は見込めないので注意しましょう。
施工ミスを起こさせない!施主ができる 3つの対策方法
ここまで断熱材別に断熱気密の注意点を見てきましたが、一般施主はどのように対策をすればよいのでしょうか。
施主ができる対策は大きく分けて3つあり、契約する前に「構造見学会への参加」、「基本性能の確認」、「気密測定の約束」をすることです。以下で詳しく解説していきます。
①構造見学会への参加
一つ目の対策は、構造見学会に参加することです。
よくあるモデルハウスや住宅展示場などでは住宅のデザインは把握できても、住宅性能を見ることはなかなかできません。
性能を確認するために、まずは構造見学会へ参加し、依頼する工務店の力量を自分の目で
把握しましょう。
最低限、このブログで紹介しているような断熱や気密の施工に雑な点が無いかだけでもチェックすることが重要です。
検討している工務店に「今建てている現場で断熱と気密層の施工が終わった段階で一度拝見させて下さい」と打診してみてください。
②基本性能の確認
二つ目の対策は、契約する際に基本性能を確認することです。
工務店の標準仕様が、自分が望む断熱気密の仕様とマッチしているのかを確認しましょう。
使用する断熱材の種類や、気密部材まで確認できれば完璧ですが、まずは最低限、住居を建てる地域でのUA値を確認しましょう。
地域区分や断熱性能について以下のブログを参照し、最低でも等級5以上の断熱性能が出せるかを確認してください。
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③気密測定の約束
三つ目の対策は、気密測定の約束をすることです。
HP等で高気密を謳っていても気密測定を実施していない工務店もあるため、契約前に気密測定の約束をしてから契約してください。
また気密測定は断熱気密工事が終わった段階で行う「中間気密測定」、家が完成してから行う「完成気密測定」の2回行うようにしてください。
特に今回解説したような壁面は、クロスやボードを施工してしまえば補修することができません。必ず中間で実施し、問題点があれば断熱気密の補修をお願いしましょう。
まとめ│適切な部材を正しく施工することが大切!
高気密高断熱住宅を建てる際は使用する断熱材や気密材も当然重要ではありますが、それをどのように施工しているかという点が重要です。
「ウレタンだから高気密になる」や「高性能な断熱材を使っているから高断熱になる」のように、「◯◯だから高気密高断熱住宅になる」とは限らないということがわかったかと思います。
施工や温熱環境への理解は契約する工務店の技術力が大きい部分で、施主自身が対策しきれない部分でもありますが、この記事で見たような知識が少しでもこれから住む家の温熱環境向上に役立てば幸いです。
施工の注意点については、ぜひ当ブログの他の記事も参考にしてみてください。
壁の断熱気密についてもっと学びたい方はこちら
【保存版】新築でやるべき「壁」の断熱気密のポイントまとめ