【注文住宅】高気密高断熱を謳う工務店で建てたのに寒い理由!最低な施工例
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こんにちは、日本住環境 広報部(イエのサプリ編集部)です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。
イエのサプリ編集部には「高気密高断熱を謳う工務店で建てたのに、家の中が寒い…」という一般施主からのお悩みはもちろん、「気密の専用部材を使っているのに思うようにC値が上がらない」という実際に家づくりに携わる実務者からの相談も度々寄せられます。
もしかしたらその原因は「気密部材」ではなく「気密施工」に問題があるのかもしれません。
今回は「気密施工」、そしてその中でも特に厄介な配管や配線などの「貫通部分」に注目します。
実際の現場の良い例・悪い例を見ながら、より具体的な施工の良し悪しを紹介していきます。
これから新築を建てる一般施主の方から実務者の方まで参考になる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
目次 [表示させる]
そもそも気密施工とは何か
気密施工とは要は住宅建築における施工精度と言えます。
気密施工は寒さの原因となる不快なスキマ風を止める、冷暖房の効きを良くする、換気の効率を上げるなど、住宅の生活環境面で大きなメリットがあります。
気密のメリットについては詳しくはこちらのブログで
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気密性能はC値で表されます。イエのサプリではC値=1.0㎠/㎡を切ることを目標数値としており、また後の経年での気密の劣化を考慮すると、C値は0.5㎠/㎡程度まで向上することを理想としています。
(高気密高断熱での住まい方を理解している場合であれば、C値0.5㎠/㎡を切る数値でももちろんOKです)
気密施工の良い例とは?気密層を連続させることが重要
上記のような数値を出すのに必要なのが気密施工となり、その方法は気密層を連続させること、具体的には気密シートや気密テープなどで住宅内をぐるりと覆うことになります。
上の写真は気密施工の良い例で、壁間にスキマなく詰められた断熱材(ピンク色のもの)の上から、気密シート(薄緑のもの)がピンと張られて丁寧に施工されていることがわかります。
また天井面や床面、気密シートの接合部などの端部は気密テープ(黒いもの)が貼られており、気密層が綺麗に連続しています。
上記のような気密施工を目指すようにしましょう。
気密施工の悪い例とは?気密シートを使っていても要注意
逆に気密シートを使用していたとしても、気密施工が出来ていない悪い例が上の写真のようなケースです。
良い例と比べても気密シート(黄色いもの)の張り方が雑であることが一目でわかります。
端部にテープ処理は無く、貫通部分も引きちぎられたような施工です。
これではせっかくの気密シートも全く意味がありません。
気密シートなどの気密部材を使えば簡単にC値が向上できると誤解されることもありますが、気密部材を使っても正しい気密施工がされていなければ、当然その効果は発揮されません。
特に注意すべき「配管貫通部」の気密施工
気密性能を向上する上で特に注意すべき点の一つとして、住宅の「配管貫通部」の施工があります。
具体的に住宅の換気設備につながるダクトなどで、給気口や排気口で多く使用されています。
気密施工は気密層の連続が重要だと言いましたが、配管貫通部はその名の通り気密層を貫通してしまいます。
また気密層だけでなく、断熱層、さらには防水層をも貫通するので、放置すると断熱欠損や気密欠損が生じるだけでなく、防水に関わる事故にもつながりかねません。
ここからは配管貫通部周りの施工はどういった方法が望ましいのかを見ていきます。
【悪い例】配管貫通部の良くない施工例(室内側)
配管貫通部の施工で一番良くないのが、何も処理をしないでダクトがそのまま貫通してしまうことです。
写真では袋入りの繊維系断熱材をダクトが貫通していますが、断熱・気密欠損となりスキマ風の原因となってしまいます。
次は配管貫通部の周りを気密テープ(白いもの)で処理している例です。
気密テープでの施工は、使うテープの本数が多くなるなど煩雑な点を除けば気密施工として認められています。
ただ上の写真のケースでは、そもそも袋入りの繊維系断熱材の施工が雑である点に加え、配管周りのテープ処理もヨレていてしっかりとした気密層の連続ができていません。
【良い例】配管貫通部の理想的な施工例(室内側)
上の写真は配管貫通部の周りに専用の気密部材(白い四角い形状のもの)を使用した理想的な施工例です。
貫通部分に専用部材をはめ込むことで配管周りをスキマなく締め付けており、また専用部材の周囲4辺と気密シート(薄緑のもの)の取り合い部には気密テープ(白いもの)が貼られています。
気密層がしっかり連続しており、気密施工としては非常に有効な納まりです。
次に配管貫通部の周りを気密テープ(白いもの)で処理した良い例を紹介していきます。
気密テープを使用する際に重要なのは丁寧にスキマなくやることはもちろん、しっかりと転圧をしてテープがヨレないようにしましょう。
気密シート(銀色のもの)とのジョイントも意識して気密層を連続させれば、専用部材を使用しなくてもテープだけで気密施工も可能です。
「配管貫通部」は外側の防水施工にも配慮する
配管貫通部の屋外側は、施工が雑だと結露水や雨水が浸入し住宅の劣化を招く可能性があります。
配管貫通部屋外側は防水処理、室内側は気密処理を確実に行うなど、防水と気密処理は必ずセットで考えることが重要です。
【良い例】配管貫通部の理想的な施工例(屋外側)
上の写真は屋外側の外壁に面する配管の施工です。
室内側同様、防水の専用部材(白い四角い形状のもの)を使用した理想的な施工例です。
専用部材を使用した施工は室内側と同じ方法で簡単なため、作業する人の違いによる施工精度のバラツキが出ない点もメリットの一つと言えます。
※屋外側の防水テープは専用部材の上と左右の3辺でも可とする場合があります
【悪い例】専用部材を使っていても良くない配管貫通部の施工例(屋外側)
上の写真も同様に屋外側の外壁に面する配管の施工ですが、何も処理をしていない例で良くない施工です。
防水事故に発展するケースもあるため、このような配管周りの施工は絶対に止めてください。
次の写真では防水の専用部材を使っているものの、テープがヨレているうえに、右の角はテープすら貼られていません。
吹き上がった雨水や結露した水がこのスキマから浸入する恐れがあるなど、防水効果を発揮しない良くない施工例となります。
「配管貫通部」はウレタンの吹き付けにも注意
ここまで壁面の施工を見てきましたが、上の写真は床面の配管貫通部の写真です。
配管を上階に通す際に設けるパイプシャフト部分で、気密処理をしないと写真のように大きな穴があいたままの状態になります。
これは配管貫通部が100φの場合、施工時に余裕をもって120~130φ程度の穴をあけるために発生するもので、放置せずに確実に気密処理を行いましょう。
この床面の配管貫通部の気密処理は1液の発泡ウレタンが有効です。
ただ一見すると気密処理ができていますが、よく見ると若干の浮きやスキマがあります。
配管周りのウレタンが盛り上がっていると、後の仕上げ材(フローリング)の施工が難しくなるため、控えめにウレタンを吹き付けたと考えられますが、スキマが残っていれば気密施工としては不十分です。
ウレタン処理は、ノズルをできるだけ貫通部分の奥まで入れ、手前に引きながら膨らませてスキマなく充填することがポイントです。
CD管・PF管の貫通部分に注意する
もう一つよくある貫通部がCD管やPF管(電気配線を通す電線管)です。
戸建て住宅ではインターホンなどで使われるケースが多く、屋外と室内を繋いでいるためここも防水と気密処理が必要な部分です。
CD管・PF管周りも気密と防水の施工に細心の注意を払う
上の写真はPF管周りの屋外側の施工写真です。
複数のPF管が壁を貫通し、その周りが何も処理をされていない為、この部分も防水処理が必要です。
また注意すべき点はPF管先端のスキマ(画像でスキマと書いてある部分)です。
CD管やPF管の内部には細い管が通っているため、この先端部分の気密処理が不十分だとスキマ風の入口になってしまいます。
例えば、屋外に設置されたインターホンからリビングまでこの管が繋がっている場合、外気がこの部分からスキマ風として室内に入り込み、リビングが寒くなることがあります。
この先端のスキマ部分に気密テープを巻くと後から取り外せなくなるトラブルもある為、この部分には厚手のパッキンを巻くことが有効です。
パッキンを配線部分にぐるぐるっと巻いてからCD管・PF管に設置することで、取り外しがしやすく、気密性も確保できるためおすすめの施工方法になります。
防水テープはヨレに注意
上の写真はCD管周りの屋外側の施工写真です。
黒い防水テープが貫通部分に貼られており、一見しっかり処理されているように見えますが、よく見るとテープがヨレて「水道(みずみち)」ができてしまっています。
赤丸の部分はテープがよれてスキマができている箇所です。
この小さなスキマから結露水が浸入する恐れがあり、さらにテープとの取り合い部のスキマからは雨水が入り込む可能性も考えられます。
防水テープはヨレずにピッタリと配管周りに貼ることが重要です。
ここまでの施工写真を見て「テープでの施工は難しいのか?」と思われるかもしれませんが、それは誤解で、テープでも専用部材でも、正しい施工を行えばしっかりと効果を発揮します。
ただ、テープは貼り付けた部分に対して戻ろうとする力が働くため、大きな開口部分にはテープに細かく切り込みを入れて貼ったり、小さな開口部分には細かく分割して貼り付けたりといったコツが必要となります。
【良い例】専用部材を使用したCD管・PF管周りの理想的な納まり
最後に専用部材を使用した良い例の写真(屋外側)です。
配管貫通部と同様の施工で、貫通部の周りを専用部材で覆い、その周りを防水テープで処理することでしっかりとした防水処理が可能です。
誰がやっても同じクオリティで出来るという点で、テープ施工よりは簡単ですが油断は禁物です。
専用部材はあくまで防水施工や気密施工を簡単にさせるものであって、施工精度を保証するものではありません。
テープと専用部材のどちらが優れているというわけではなく、施工者が正しい技術で施工を行うことが重要です。
気密施工とは気密層を連続させることによって住宅内にスキマを無くし、住宅の住まい環境を良くするための施工です。
その中でも住宅を貫通する配管・配線部分は気密層だけでなく、断熱層、防水層を貫くため、特に注意が必要です。
貫通部は何もしなければ大きなスキマとなり、スキマ風の原因になるばかりでなく防水事故を起こす恐れもあるため丁寧に処理しましょう。
その際、防水・気密テープによる処理であっても、専用部材を使った処理であっても細心の注意を払いながら施工するようにしましょう。
全ては「施工が命」と言えます。
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