DIY素人が家一軒まるごとセルフビルド!高性能な自宅建築の結果やいかに【高気密高断熱】
チャンネル登録をよろしくお願いします!
こんにちは、日本住環境 広報部(イエのサプリ編集部)です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。
注文住宅を建てる際、どこのハウスメーカーで建てるか、どこの工務店で建てるかを検討することが一般的です。
またその中で高気密高断熱住宅を建てようとした際には、断熱・気密施工に詳しい建築業者を選ぶ必要があります。
今回はその選択肢を除外し、自分で自ら高性能な家を建てる「セルフビルド」という選択をした方の家に訪問し、インタビューを行ってきました。
(上図)セルフビルドで施工中のシンノスケさん邸の平家
現在も建築中の家では、どのような施工が行われているのか、また住宅性能はどうなっているのか、セルフビルドならではの施工のこだわりポイントもあわせて伺いました。
プロも驚きの高気密・高断熱の施工で、これから家づくりをされる方、また実際に家づくりに携わる実務者の方にも参考となる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
※イエのサプリではセルフビルドを推奨しているわけではありません。セルフビルドをする際は自己責任で実施してください。
目次 [表示させる]
セルフビルドをするに至った経緯と実情
今回訪問したシンノスケさんに、まずはセルフビルドに至った経緯を聞いてみました。
当初、高気密高断熱住宅を建てようと各ハウスメーカーを回っていたものの予算が全く合わず、また実家敷地内に建築する必要があったため、思い切って「自分で建てよう」と踏み切ったそうです。
元々建築関係の人なのでは?という質問も投げかけてみましたが、シンノスケさん自身はセルフビルドを始める前は建築の実務経験や学歴も一切なく、建築そのものについてゼロから知識をつけた完全な建築素人であることがわかりました。
主な情報種収集源はイエのサプリをはじめとした住宅系YouTubeチャンネルや、実務者のブログ、SNS、書籍などで、文字通り独学でセルフビルドをされています。
基礎や上下水道、上棟といった部分は業者や友人の大工に発注し、実務者の方と一緒に作業されたそうですが、家の中の断熱材の施工から外壁材の施工まですべてシンノスケさんが一人で作業されています。
外観だけを見てもデザイン性が高いだけでなく、ケラバなど屋根の細かいキワの部分までとても丁寧に施工されていることがわかります。
シンノスケさんのセルフビルドの様子は、下記のX(旧Twitter)からチェックできます。
https://x.com/Shinnosuke_DIY
ここからは住宅内のこだわりポイントを紹介していきます。
セルフビルド住宅のこだわり①壁面
シンノスケさんは高気密高断熱住宅を建てるべく目下セルフビルドを行っていますが、どのレベルの断熱性能を目標としているのかを聞いてみました。
答えは「断熱等級7」とのことでした(最終的には完成後、プロに依頼して数値を計算してもらう予定とのこと)。
断熱等級7とは建築中の地域(6地域)では、Ua値0.26の基準をクリアする必要があるなど非常に高い断熱性能が求められます。
断熱の地域区分についてはこちらのブログを参照ください
おすすめの関連記事
現在は断熱性能の最高等級として認定されているこの断熱等級7は、もちろん簡単にクリアできる数値ではありません。
重要なのは、床、壁、天井の断熱施工、そして気密の施工です。
まずはセルフビルド中のシンノスケさん邸の「壁面」がどのような施工をされているかを見ていきます。
こだわり抜いた壁面の断熱気密施工
イエのサプリ編集部が訪問した際、壁一面に裸の繊維系断熱材(グラスウール)と防湿気密シートが綺麗に施行されている状態でした。
もちろんこの壁面施工もシンノスケさんご自身ですべて行っています。
壁面の気密層については合板気密工法が採用されています。
合板気密工法とは、外側の構造用面材を専用のテープでつなぎ、外側で気密をとる工法で、イエのサプリでも「比較的簡単に気密が取りやすい工法」として紹介しています。
さらにシンノスケさんはさらなる気密の補強と防露の目的で室内側に気密シートを張っています。
気密シートはシワやたるみをつくらないように張られ、気密シート同士の重ね合わせは気密テープで連続させています。
また壁面に張った気密シートの30㎜以上を梁・桁部分まで張り上げて、タッカー留めしテープ処理するなど、細かい部分まで丁寧に施行されているのが印象的でした。
しかし最終的にシンノスケさん邸の断熱気密施工はこれで終わりません。
イエのサプリ編集部が訪問した後の施工で行われたのは、断熱効果の高い板状の断熱材と、配線用胴縁の追加でした。
室内側に30mmの内付加断熱をすることで、断熱性能をさらに強化。
配線用胴縁は高気密高断熱住宅を手がける会社でも行われている施工で、室内側に胴縁を取り付けることで、配線を通しやすくするための空間を確保するための工法です。
メリットとして配線が断熱材や気密シートを貫通することで生じる、断熱欠損や気密欠損のリスク低減があります。
ここまで見ただけでも非常に勉強し、施工にもこだわっている姿勢が見て取れます。
気密の弱点になりやすい窓は種類にこだわる
窓は断熱外皮の中でも特に断熱性能が弱い部分です。
当然シンノスケさんもその点は把握しており、窓はすべてトリプル(ガラスが3枚ついている)樹脂サッシを選択しています。
さらにこだわったのは窓の種類で、1ヶ所の掃き出し窓(引き違い窓の1種で窓の下部分が床まで達している窓)を除いてすべて開き窓+FIX窓の組み合わせを採用しています。
当初は全面引き違い窓の予定でしたが、気密性を考慮して上記の窓を選択したとのことです。
引き違い窓だと召合わせ部分にどうしてもスキマができてしまい、その部分が気密の弱点になりやすいというデメリットがあります。
FIXの窓は明かり取り用の開かない窓なので、気密が最も取りやすい窓です。
さらにもう片側に位置する開き窓はロックをかけるとパッキンがつぶれてしっかり気密が取れる仕様で、こちらも比較的気密性を担保しやすい窓になっています。
もちろんこの窓も発注から施工までシンノスケさんが行っています。
窓周りの隙間になりそうな部分には低発泡のウレタンを注入することで、気密強化+地震に追随することが期待できます。
セルフビルド住宅のこだわり②基礎
(上図)完成直後の基礎
「壁面」に続いてみていくのは断熱気密で重要な「床面」の施工です。
シンノスケさん邸では床面の施工は基礎断熱を採用しています。
前述の通り基礎は業者による施工ですが、断熱施工等はすべてシンノスケさんがご自身で行っています。
断熱材施工前の基礎の下地処理
最初に行ったことは断熱材を張る前に、基礎の底板と立ち上がりの継ぎ目部分にできたノロ(水とコンクリートの粉等が混ざった汚泥)を削ることです。
ノロをそのままにして断熱材を張ると不陸ができてしまい、断熱材が張りにくいばかりか、
不陸部分の隙間からシロアリが入りやすくリスクがあります。
このノロを削る施工はやらない工務店も多い中で、シンノスケさんは丁寧に下地処理を行っています。
丁寧な断熱施工と徹底した防蟻処理
ノロを削った後は、基礎打継部に防蟻用のコーキングを全面に処理し、基礎部分に板状の断熱材を張っていきます。
シンノスケさんに苦労した点を伺ったところ、ノロを削っていても基礎に微妙な凹凸があるため断熱材の一部を削って調整する点や、断熱材に塗る専用の接着剤が粘度が高く、伸ばしにくい点を挙げていました。
いずれも実際に施工に携わっていないと気づかない点ばかりで、家造りの細かい部分での難しさが想像できます。
断熱材施工後は、つなぎ目に防蟻用の発泡ウレタンやシール、テープなどで処理しています。
基礎断熱は床断熱と比べてシロアリのリスクが比較的高いというデメリットがありますが、リスクを徹底的に潰していることがわかります。
シンノスケさんは断熱気密を強化することで得られる「快適性」を追求するだけでなく、長期に渡って家を長持ちさせる「耐久性」についてもこだわっている点が伺えました。
住宅の維持管理も考えられた施工
シンノスケさん邸ではセルフビルドならではの、一般的な住宅では見ない施工がされています。
それが基礎に張られた養生板です。
表面がツルツルの養生板を置くことで、コンクリートの粉塵抑制や、掃除のしやすさ、後の点検で床下に潜ったときの作業しやすさ向上といったメリットが挙げられます。
この動画を見た実務者の方からもそのアイデアを賞賛されるなど、住宅の維持管理まで考えられたこだわりの施工が光っていました。
セルフビルド住宅のこだわり③浴室
同じく「床面」でみていきたい重要な部分が浴室です。
シンノスケさん邸の基礎断熱施工は非常に丁寧に施工されていましたが、浴室周りも何やら断熱気密以外でのこだわりがありそうです。
浴室の基礎断熱部分の断熱強化
一般的に浴室部分はたくさんの配管や配線等がある部分で、適切な断熱・気密処理をしていない住宅ではそこからの隙間風が原因で寒くなりがちなスペースです。
シンノスケさん邸では写真のように浴室の断熱処理が2段になっていました。
これは一連の基礎断熱の断熱処理をしたうえで、さらに浴室部分だけ断熱補強で50mmの板状の断熱材を張っているためです。
浴室の断熱気密処理は1液の発泡ウレタンでもできますが、いずれ解体して処分する場合は産業廃棄物になるため、ウレタンを全部そぎ落とさなければなりません。
手間はかかりますが、いずれ解体する場合を考えるとシンノスケさんのように断熱材とテープでの処理が将来的にはおすすめです。
イエのサプリ編集部が訪問した際にはまだUB(ユニットバス)は未設置でしたが、その後のシンノスケさんの投稿を確認すると無事にUBも設置されたとのことです。
浴室の配管部分は防蟻コーキングで劣化対策
浴室周りの配管は気密の観点から隙間の処理も重要ですが、同時にシロアリへの対策も重要になります。
シロアリの中には「水気」に引き寄せられて侵入してくる種類もいるため、浴室などの水回りはことさら注意が必要な部分です。
またその種類のシロアリは土壌からアタックを仕掛けてくるケースが多く、下の床面から立ち上がる配管部分には対策が必要になります。
シンノスケさん邸ではシロアリ対策の一つとして横引き配管を採用している他、どうしても床から立ち上がってくる配管部分には防蟻コーキングをたっぷりと塗りこんで対策しています。
基礎断熱を採用する住宅における断熱気密の面はもちろん、劣化対策の面でも参考になる施工といえます。
セルフビルド住宅のこだわり④小屋裏
「壁面」「床面」に続いてみていくのは「天井面」の施工です。
シンノスケさん邸の天井面の断熱は桁上断熱を採用しています。
桁上断熱は桁の上に面材を敷き、その上から気密シート、断熱材を施工します。
面材の上から気密シートや断熱材をただ置いていくように敷き込むことができるため、下から施工することの多い天井断熱と比べると気密のとりやすい工法になります。
驚異的な断熱材の厚み
シンノスケさん邸では合板の上に気密シートを張り、その上に300㎜~600㎜の断熱材を敷いています。
軒先部分は敷きこめる断熱材の高さに限界があるため高性能な300㎜の断熱材を、中心部は600mmの断熱材を敷き、小屋裏全体の性能が均一になるよう調整しています。
他で余った断熱材を桁上断熱に回すなど、出来る限り廃材を出さないように工夫している点もセルフビルドならではの施行と言えます。
ちなみに一般的な戸建て住宅であれば断熱材の厚みは100~160mm程度ですので、どれだけ厚みが違うのかは一目瞭然です。
また気密の面では、合板の継ぎ目は気密テープで処理をし、さらに裏側からは発泡ウレタンを吹いている他、束まわりも専用部材とテープを使いすべて丁寧に気密処理されていました。
天井面の隙間を徹底的に塞いだ施工で、一切の漏気が無いようにしていることがわかります。
この徹底した気密対策が後述する気密測定の結果にどう影響してくるのかも見ものです。
小屋裏の通気も十分に確保
シンノスケさん邸でもしっかり外壁通気層が施工されています。
高気密高断熱住宅で大事な考え方として「内気密・外開放」という言葉があります。
「内側(室内側)は気密化をして隙間風を塞ぐと同時に、外側(外壁側)は外壁通気層工法や小屋裏換気で湿気を排出する」という考え方です。
小屋裏が高温になったり、湿気がこもったりすると、屋根の耐久性や住環境に悪影響が及ぶ恐れがあるため、外壁通気層や小屋裏換気で通気を確保することが大切になります。
シンノスケさん邸では屋根頭頂部に付けられる棟換気が端から端まで通しで入っていて、より多く小屋裏換気できるように設計されています。
また、軒換気は農業用の防虫効果のあるグラスファイバーネットを張り、その上にヒノキの木材を張るという独自の設計がされています。
経年で空いてきたヒノキの木材のスキマからグラスファイバーネットを通り、棟に流れる仕組みとなっています。
シンノスケさんは「内気密・外開放」の原則も勉強しており、小屋裏の通気を十分確保できるような施工がされていました。
衝撃のC値0.05!セルフビルドの超高気密住宅
ここまでシンノスケさんの徹底した断熱・気密施工を見てきましたが、このセルフビルドの住宅の気密性能はどの程度のものになるのでしょうか。
イエのサプリ編集部が訪問した翌週に気密測定が実施されました。
気密性能について改めておさらいすると、気密性能は「C値(相当隙間面積)」で表され、0㎠/㎡に近いほどスキマの少ない家、つまり「高気密住宅」と判断されます。
普段イエのサプリではC値=1.0㎠/㎡以下を「高気密住宅」と判断し、家づくりの際はこの数値を下回ることを目標とするように呼びかけています。
そんな中、シンノスケさん邸の中間気密測定の結果は…
C値=0.05㎠/㎡
信じられないくらいの超高気密住宅となりました。
ここまで見てきた丁寧な断熱・気密の施工が身を結んだ結果と言えます。
取材を通して、シンノスケさんの事前勉強の努力や丁寧な施工がC値0.05㎠/㎡という超高気密な数値の結果につながっているとわかりました。
断熱・気密処理だけでなく、防蟻処理などの劣化対策や点検口の真下に配管を集中させた施工など、将来的な維持管理まで考えられています。
シンノスケさん曰く事前の住宅性能や施工に関する勉強には特に時間をかけたそうです。
また、基礎や上棟といった部分を除いてすべての作業をほぼ一人で行ったため、どの作業もとても大変だったと語っています。
作業前は壁面の気密シートの施工もそこまで大変ではない印象だったものの、実際に気密シートをシワなく丁寧に張っていこうとすると、1人での作業ということもありとても重労働だったそうです。
(上図)特に大変だったという屋根材の施工
また、屋根材の施工は高所の狭い足場で時間のかかる作業となり、ケガの恐れも伴う非常に危険な作業だったと振り返っています。
シンノスケさんのセルフビルドは現在も続いており、その様子は下記のX(旧Twitter)からもチェックできます。
https://x.com/Shinnosuke_DIY
今回はセルフビルドで家造りをしているシンノスケさんのお宅に取材し、プロも驚きの高気密高断熱や劣化対策の施工を紹介してきました。
セルフビルド自体は非常に困難で、危険も伴うためイエのサプリでは推奨できませんが、要所要所の施行ポイントについては非常に為になる内容ですので、これから家づくりをされる方は是非参考にしていただければ幸いです。
当ブログでは工務店選びや構造見学会でのチェックすべきポイントなども分かりやすく解説していますので、ぜひ他のブログもチェックしてみてください
気密性能の重要性についてもっと学びたい方はこちら
【注文住宅】外観は今時なのに寒すぎる!新築で寒い家の原因と対策