高気密高断熱住宅が経年劣化する理由をまとめてみた
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こんにちは、日本住環境 広報部(イエのサプリ編集部)です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。
高気密高断熱住宅を建てる際によく心配されるのが「気密の経年劣化」です。
「気密性の高い住宅を建てても経年で劣化するから高気密は意味がない」という意見も散見されますが、果たして本当にそうでしょうか?
イエのサプリでは既存住宅でのC値の変化について実際に調査することはもちろん、関連する事業者の情報から一つの結論を出しています。
過去の気密の経年劣化についての記事はこちらから
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上記記事では、高気密・高断熱住宅が経年劣化する理由についての概要を説明しましたが、今回の記事では実現場の写真を用いてより具体的な内容で解説します。
これから家づくりを検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次 [表示させる]
気密性能の経年劣化は避けられない?
家の気密性能は経年変化によって確かに落ちてしまいますが、専用の気密部材を使用した高気密な家では、数十年経っても大幅に劣化したり変化することはありません。
むしろ、将来的に性能が落ちるからといって気密処理のコストを削り、低気密な家をつくってしまうと、気密性能だけでなく家全体の劣化を早めることになります。
経年劣化を防ぐための住まい方はある?

イエのサプリ編集部では、住まい方で特に意識する必要はないと考えています。ただし、後からエアコンや太陽光発電システムなどの設備を増設する場合、断熱気密層を貫通してしまうため、注意が必要です。
断熱気密層を貫通しても、その後の断熱気密処理が正しくできていれば問題ありませんが、実際には不十分な処理がされることが多いです。エアコンも太陽光発電も建築中にあわせて設置をしてしまうことが望ましいでしょう。
以下で、実例の写真を見ながら詳しく解説していきます。
【実例①】太陽光発電の施工で注意すべきポイント

上図:太陽光発電を後付けした際の小屋裏空間の写真
屋根から小屋裏空間まで太陽光発電のケーブルを配線するため、断熱気密層を貫通します。
その際、間仕切壁からケーブルを貫通させたため、間仕切壁の気流止めと断熱材を外しての処理が行われました。その後、気流止めや断熱材を元に戻せば問題はありませんが、今回の例ではそのまま放置されていました。

気流止めが外されたことで、1820㎜×105㎜の大きな空洞が残り、断熱材が外された部分は断熱欠損となってしまいました。
【実例②】エアコンの施工で注意すべきポイント

上図:後付けしたエアコンの配管カバーを取り外した際の写真
この住宅は以前、イエのサプリ編集部で訪問した高気密高断熱住宅です。家全体を調査してもスキマはなく、気密性が非常に高い住宅でしたが、唯一エアコン配管の壁貫通部から漏気がありました。
後日、施主が配管カバーを取り外してみたところ、このような大きな穴が空いていました。この穴をそのままにしておくと、スキマ風の原因となります。
こちらの住宅は新築時はC値0.4㎠/㎡でしたが、入居から1年後の取材時にはC値0.6㎠/㎡まで低下していました。これはおそらく、このエアコンの大きな穴が原因です。ただし、他の気密施工に問題はなかったため、今後は大きな劣化なくC値0.6㎠/㎡程度で落ち着くと考えられます。
詳細はこちらの動画をチェックしてみてください
■関連動画■
【注文住宅】都内の高気密高断熱住宅を丸裸にしてみたらヤバい欠損が判明した
もしエアコンを後付けするなら?
生活スタイルの変化などで後からエアコンを追加する場合もあります。その場合、工事後には必ず断熱気密処理を行うようにしましょう。

上図:エアコンの後付け穴を空けている写真
エアコンの後付け穴は、丸いのこぎりのようなもので抜くことが一般的です。しかし、一度つくられた防水層や断熱気密層に無理矢理穴を開けることになります。その結果、防水シートや断熱材、気密シートがよれたり破れたりすることがあります。
後付けの穴をそのままにせず、配管貫通部には断熱材を詰め、気密シートと配管を気密テープでしっかりと連続させることが大切です。

住宅の外側は防水層を意識してしっかりと施工されますが、住宅の内側の断熱層や気密層への処理は、エアコン業者が補助部材を持ち歩いていないことが多く、見逃されることもあります。
エアコン業者との打ち合わせをしっかり行い、断熱気密処理を忘れずに行うようにしましょう。

上図:後付けしたエアコンの配管部分の熱画像
エアコンの配管は塩ビ管の中に冷媒管(エアコンの室内機と室外機をつなぐ管)が通る仕組みになっています。
塩ビ管と冷媒管の間はスキマになっていて、断熱材が何も入っていません。できればスキマに断熱材をつめこみ、内側で気密処理行って断熱気密欠損を防ぎましょう。
【実例③】現場発泡ウレタン断熱材で注意すべきポイント
イエのサプリ編集部では過去に地震による気密の劣化があるかも調査しています。
調査した住宅はC値0.3㎠/㎡の高気密高断熱住宅で、築3年の間に震度5以上の地震が3回発生している地域で撮影を行いました。結果はC値0.5㎠/㎡と大きめの地震があった割には気密性能の劣化は許容の範囲と言える結果でした。
ただその後の調査では気密シートや気密テープなど、気密部材で丁寧に施工した部分についてはスキマ風は確認できませんでしたが、ある部材を使った部分からスキマ風が発生していました。
■関連動画■
高気密住宅の地震による経年劣化を実際に調査してみた
上図:ひび割れたウレタン断熱(別現場での写真)
それがウレタン断熱材を使った部分でした。
この住宅では基本的に繊維系断熱材と気密シートで断熱気密処理をしていましたが、一部処理ができない部分にウレタン断熱材を使用していました。
家全体を調査したところ、繊維系断熱材+気密シートで処理された部分には劣化は見られませんでしたが、一部ウレタン断熱材を使用した部分からわずかにスキマが発生していました。
現場発泡のウレタン断熱材は吹き付け後に硬化するため、建物に対する追従性があまり高くなく、地震により建物が動いた際に硬化したウレタン断熱材が割れてしまった可能性があります。
ウレタン断熱材は気密性が比較的取りやすことで人気はありますが、地震等で割れが発生した際に気密性が劣化してしまう可能性がある点には注意が必要です。
劣化しにくい専用の気密部材を使用するのがおすすめ
専用の気密部材とそれ以外の部材の違いは、伸縮性や耐久性です。
経年により木材が動いても、専用の気密部材であれば追従してスキマを埋めてくれます。また、専用の気密部材は家に使用されることを前提に様々な性能試験をクリアしているため、簡単に破れたりせず、耐久性にも優れています。

上図:気密テープではなく養生テープが使用されている現場写真
専用の気密部材を使用しない住宅では、例えば竣工時にC値1.0㎠/㎡だった場合、年数が経つとC値が2.0㎠/㎡など大幅に低下する恐れがあります。
工務店によっては、専用の気密部材を使用していないところもありますので、施工時に使用されている部材についてしっかり確認しましょう。
断熱材には様々な種類がありますが、イエのサプリ編集部では、断熱性に優れる上に丈夫な繊維系断熱材+別張りの気密シート(もしくは構造用面材)をおすすめしています。

上図:繊維系断熱材+別張りの気密シートの施工例
詳しくは下記のブログを参照ください。
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気密部材を使って施工すれば、大幅な劣化を防げます。
家の経年劣化を防ぐためには、以下の3点に気をつけましょう。
気密性能や断熱性能を維持するためには、丁寧な施工はもちろん、換気や通気など風通しにも注意が必要です。
依頼する工務店やハウスメーカーがどのような施工をしているか、構造見学会で確認しながら決めることが、経年に強い家づくりにつながります。
家づくりを進める際は、ぜひ上記のポイントを意識してみてください。
住宅の経年劣化についてもっと学びたい方はこちら
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