【大手ハウスメーカー】2600万円の注文住宅を丸裸にしてみた/高気密高断熱を売りにする系ハウスメーカーの実態
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こんにちは、日本住環境 広報部(イエのサプリ編集部)です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。
今回イエのサプリ編集部が取材したのは、高気密高断熱を売りにするハウスメーカーで建てたMさんの住宅です。
施主のMさんは住宅系YouTuberの動画を参考にするなど、住宅性能について学んだうえで家づくりをスタート。
高気密高断熱を売りにするハウスメーカーを選び、温熱環境にもこだわった住宅を建てられています。
その甲斐もあり、中間気密測定ではC値=0.47㎠/㎡と高気密を実現したM邸。
そこで今回は高気密高断熱住宅となったM邸の完成後の気密測定や、気密・断熱面でおすすめの仕様、残されたスキマや弱点部位について解説します。
これから家づくりをされる方はぜひ参考にしてみてください。
目次 [表示させる]
【本当に高性能?】高気密高断熱住宅を徹底調査
中間気密測定時はC値=0.47㎠/㎡と高気密だったM邸。
今回、イエのサプリ編集部で現在の気密性能を測定しました。
完成から約1年半が経ち、気密性能はどのくらい変化しているのでしょうか。

結果はC値=0.8㎠/㎡と中間測定から変化はあったものの、高い気密性能を維持していました。
気密性能は3年以内に経年などを理由に0.2~0.3㎠/㎡程度落ちると考えられています。
そのため、今後は気密性能が大幅に下がることはなく、現在のC値=0.8㎠/㎡程度で落ち着くと考えられるでしょう。
イエのサプリではC値=1.0㎠/㎡以下、断熱等級は最低でも等級5以上の性能であることを高気密高断熱住宅の目安としています。
気密性能については上記のような経年変化も想定すると、建てる際にはC値=0.7㎠/㎡以下を目指すのがより望ましいと言えます。
気密測定の結果、数値上は高気密高断熱住宅と考えられるM邸。では、実際の住宅性能はどうなのでしょうか?
居室内の温度差を測る熱画像カメラや、フォグマシーンを用いたスキマを特定する試験で住宅内をさらに詳しく調査します。
熱画像カメラで住宅内の温度差を調査

家中の温度差を熱画像カメラでチェックしたところ、なんと家中がほぼ均一で断熱欠損が見当たりませんでした。

断熱気密欠損が起きやすい母屋下がり部分やコンセントまわりにも断熱欠損は見当たりません。
このことからもM邸が非常に高気密高断熱住宅であることが伺えます。
ここからは実際にMさんが高気密高断熱住宅を建てるうえでこだわったポイントや、おすすめの仕様について紹介します。
【こだわりポイント①】窓

窓まわりは断熱・気密欠損しやすい部分です。
M邸ではすべての窓に樹脂サッシを採用しています。
樹脂はアルミの約1000倍もの断熱性能を持っており、オール樹脂サッシにすることで窓から出入りする熱を大幅に減らせます。
また室内との温度差をなくすことで結露対策にも期待ができます。
熱画像カメラでみても、断熱性の高さがよくわかります。
【こだわりポイント②】浴室+洗面脱衣所の基礎断熱化

浴室を寒くしないようにするには、断熱気密層を連続させ途切れさせないことが重要です。
浴室の気密化の方法は「気流止め」を行うか、「基礎断熱」を行うかの2択になってきます。
詳しくはこちらのブログでも紹介しています。
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浴室の基礎断熱化はイエのサプリ編集部でもおすすめしている断熱気密が取りやすい施工方法です。
ただ人通口が正しい処理をされていないと、床下から冷気があがってきて浴室内を冷やしてしまいます。
また、床下点検の際に人通口が外されたまま戻されず、そのまま外気が入り込んでしまうといったトラブルも見受けられます。


M邸では洗面脱衣所から浴室まで基礎断熱にして断熱気密層を連続させる方法が採用されています。
この方法であれば浴室と洗面所の人通口は塞がなくても良く、また配管・配線なども一か所にまとまっているため業者の方も点検しやすいなどメリットがあります。
高気密高断熱住宅の通気層は?

結露対策が不十分だと、せっかく高気密高断熱住宅を建てても、壁内にカビが発生したり住宅の耐久性が著しく低下したりといったトラブルの恐れがあります。

室内から発生する湿気は断熱材の内側に張られた防湿気密シートで防ぎ、また外側には通気層をつくるこで、万が一断熱層内に入った湿気や水蒸気を排出することができます。
このように外壁と構造躯体の間に空気の通り道となる通気層をつくり、断熱材に湿気を溜めない工法を外壁通気層工法と言います。
詳しくは下記の記事を参照ください。
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フォグマシーンを住宅の外壁通気層の入口となる土台水切りの下から噴霧し、軒や棟に設置された通気部材から煙が出るかを確認しました。

結果は通気部材から煙が出ていることが確認できました。
外壁通気層工法がしっかり機能していることがわかりました。
高気密高断熱住宅の換気計画は?
続いて、M邸の換気計画が正常に機能しているかを調査しました。
住宅の24時間換気は建築基準法で、1時間あたり家の体積の半分である0.5回の換気が義務づけられています。
M邸の換気回数は0.52 回/hと基準を満たしていました。
下記の二酸化炭素濃度の結果をみても、しっかり換気できていることが分かります。


※就寝時に1000ppmを超えていますが、現在M邸の寝室ではお子さんたちとあわせて4人で寝ていることが理由です。
そのあとすぐ500ppm以下に下がっていることからも、換気システムが正常に機能しているとわかります。
【注意】24時間換気は定期的なメンテナンスが必要

M邸はダクト式の第1種熱交換換気を採用していますが、気密性能が高いおかげで換気経路がしっかり機能しています。
また、換気システムのクリーニングを2か月に1回を目安に実施し、ダクト内も非常に清潔な状態を保っていました。
このように取扱説明書に沿って日々のメンテナンスを欠かさないことも重要です。
気密性能の高い住宅でも、換気システムのメンテナンスやクリーニングを怠れば、換気システムが正常に機能しなくなる原因となります。
24時間換気は機械なので寿命もありますが、寿命前に稼働しなくなる主な原因は、メンテナンス不足です。
換気システムのメンテナンスについては以下の記事で詳しく解説しています。
ぜひ参考にしてみてください。
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高性能でも注意!断熱気密欠損が起こりやすいポイントは?
高気密高断熱住宅だとわかったM邸ですが、いくつか断熱気密欠損がみられた箇所がありました。
【断熱気密欠損しがちな場所①】システム階段


システム階段は間取りや設置条件に応じて選べることで人気です。
しかし、現場では各パーツごとにカットされた階段を組み立てるだけのため、断熱気密欠損が起こりやすい部分です。
M邸でもこのシステム階段まわりからスキマ風が確認できました。
【断熱気密欠損しがちな場所②】キッチンの配管周り

次にスキマ風が多かった場所はキッチンまわりです。
キッチンの足元には、ガスや水道、排水など数多くの配管が通っています。
床に穴をあけて配管していきますが、あいた部分の断熱気密処理が適切に行われていないとそのままスキマとなってしまい、床下から冷気がどんどん侵入して足元が冷やされてしまいます。

床下の配管・配線はMさんが自ら床下に潜り、1液の発泡ウレタンで処理を行っています。
一見すると問題なさそうですが、よく見ると部分的にスキマが残っており、これがスキマ風の原因となっていました。
本当に僅かなスキマですが、気密施工としては不十分となってしまいます。
ウレタンでの気密処理は、ノズルをできるだけ貫通部分の奥まで入れ、手前に引きながら膨らませてスキマなく充填することがポイントです。
【断熱気密欠損しがちな場所③】ガス乾燥機の配管まわり


乾燥機の配管まわりも処理が甘くなりやすい部分です。
断熱ダクト内の配管より壁面の穴が少しだけ大きくスキマができていましたが、コーキングや気密テープなどで簡単にリカバリーできる部分でした。
家事の時短につながり人気のあるガス乾燥機ですが、配管部分をくり抜く際に大幅な断熱気密欠損が起こりやすい部分ですので、後付けで施工する場合は注意が必要です。
エアコン同様、必ず建築中に先行配管をするようにしましょう。
いくつか気密欠損は見つかったものの、スキマの場所はとても限定的で家の中で寒さを感じるほど大きなものはありませんでした。
このように、高気密であれば多少の欠損があったとしてもその場所をピンポイントで特定でき、リカバリーも行いやすいというメリットがあります。
調査の結果、M邸は数値的にも実際の性能的にも高気密高断熱住宅でした。
高気密だからこそ弱点となる気密欠損も明確なため、簡単なリカバリーですぐに改善が可能です。
高気密高断熱住宅を建てるためには、細かく打ち合わせを行い、具体的なC値や気密測定の実施を約束してもらうことが大切です。
また、今回のM邸のように施主側が家づくりをはじめる前に住宅性能についてある程度知識をつけることも必要になります。
気密性能や断熱性能、工務店の選び方などについて、ぜひ当ブログも参考にしてみてください。
気密性能の重要性についてもっと学びたい方はこちら
【大手ハウスメーカー】5000万の建売住宅がC値1.4㎠/㎡なのに隙間風で寒い理由とは?