【建売住宅】ローコスト住宅を検証したら住んだ後にやるべきことが明確になりました
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こんにちは、日本住環境 広報部(イエのサプリ編集部)です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。
「換気システムをとめていないから大丈夫」「スイッチを入れると稼働音がうるさいから換気している」このように、稼働音やスイッチのオンオフだけで換気ができていると判断するのは危険です。
たとえ稼働音が聞こえても、実は給気口や排気口からの換気量は0㎥/hというケースもあります。
ではどのようなケースで換気量が0㎥/hになってしまうのか、今回は築2年の建売住宅にお邪魔し、換気量を測定してきました。
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【実測】換気(給気・排気)できていない3つのケース
換気ができていないとはどのような状態なのでしょうか。ここでは、換気できていない3つのケースについて測定結果とあわせて紹介します。
メンテナンス不足でホコリで目詰まりが起こっているケース
最初のケースは設計上換気量が50㎥/hある2階のトイレの排気ファンです。
測定結果は…
日常的に使っている排気口でしたが、実はまったく排気していませんでした。
排気しない原因は換気扇などの故障ではなく、メンテナンスをほとんどせず放置していたフィルターにあります。
実際にカバーを外し、フィルターを確認してみました。
ホコリが壁になり空気の通りを邪魔したことで、一生懸命外に空気を出そうとしていても、実際にはほとんど排気できていなかったようです。
この後、撮影スタッフが5分程度、取扱説明書に従って掃除を行い再度測定したところ、換気量を20㎥/hまで戻すことに成功しました。
少しのメンテナンスで換気量が大きく変化することがわかります。
ただ、設計換気量の50㎥/hと比較して30㎥/h足りません。強運転時の換気量も測定してみましたが、25㎥/hと少し増えたものの設計時の換気量とまったくちがう数値になりました。
今回の家では、メンテナンスを怠ったことによって、ホコリがフィルターだけではなく、奥の方まで入り込み目詰まりしてしまっているからだと考えられます。
フィルターが汚れてまったく給気できていないケース
給気口のフィルターもメンテナンスを怠ると、汚れがフィルターの膜となり空気を通しにくくさせます。
1階の寝室の給気口ですが、測定結果は0㎥/h。
給気口の中を確認すると元の色がわからないほど真っ黒に汚れたフィルターが出てきました。
汚れたフィルターは換気量を落とす原因になるだけではなく、取り入れた空気が汚れたフィルターを通しホコリや花粉、カビなどを家の中に拡散させてしまいます。
このような汚い空気を吸い続けてしまうとアレルギーやシックハウスをまねくおそれがあるため、特に給気口のフィルターは清潔さを保つことが重要です。
網付き給気口は給気量が落ちる原因になる
給気口のなかには、防虫のため網が付いているものもあります(写真の赤い矢印部分)。しかし、このようなメッシュの細かい網は、フィルターがあるため基本的に必要ありません。
逆にこの網があることで、外から入ってきたホコリが網部分で目詰まりを起こし給気の妨げになる可能性があります。
また、給気の妨げを起こしているのが2階、3階だと対処できず、そうなると給気は1階部分からのみになり、設計された換気計画通りに空気が流れなくなります。
できれば網付きの給気口はやめて、フィルターを性能のよいものに変えるといった対応がおすすめです。
すでに網付きの給気口を設置している場合、工務店へ網を外せないか相談してみましょう。
給気口を閉めたままにしていて給気できていないケース
今まで手動で開閉できる給気口を使用してこなかった場合、給気口を閉めたまま数年生活していたというケースも珍しくありません。
当然給気口が閉まっていれば、一切給気をしません。このまま測定しても換気量は0㎥/hです。
給気口から空気が入らなければ、その分の空気はスキマから補われるため、スキマ風の多い家になってしまいます。
給気口はフロントキャップが手前に出ていて、壁についている土台との間にスキマができていれば開いている状態ですので、下の写真を参考に必ず開けるようにしましょう。
この給気口は24時間換気システムの一部になりますので、手動で開閉できますが、外が暑くても寒くても雨が降っていても閉めないようにしてください。
換気の初期性能を維持するためのポイント
新築であっても換気量が維持できず、ほとんど換気していない家になってしまうケースがあることをわかってもらえたかと思います。
そうならないためには、どのようなことに気を付ければいいのでしょうか。
取扱説明書に従って必ずメンテナンスを行う
「【実測】換気(給気・排気)できていない3つのケース」で挙げた測定結果の通り、換気システムにはメンテナンスが非常に重要です。
これは換気量を維持するためにも、清潔な空気を取り入れるためにも欠かせません。
メンテナンスの方法や頻度はメーカーによって大きく変わり、工具が必要になる複雑ものから、工具が不要で誰でも簡単できるものまで様々です。
▲最近は少ないもののメーカーによっては、業者に依頼しなければメンテナンスできないようなものまであるので、必ずメンテナンス方法を確認しておきましょう。
換気システムを選ぶ際は、性能や電気代の他にメンテナンスがしやすいかどうかを考慮して選ぶと、住んだ後に手間をかけずに換気量を維持しやすくなります。
もし今までメンテナンスをほとんどしていない人で「今更どうメンテナンスすればいいの?」「説明書なんてもらわなかったと思う…」という場合はこちらの動画「掃除に電気工事士の資格が必要!?換気のメンテナンスは素人には無理?【Q&A】」を参考にしてみてください。
メンテナンス方法だけではなく頻度もしっかり確認しておこう
メンテナンスの頻度はメーカーだけではなく、家のまわりの環境によっても左右されます。
例えば家のまわりが土ボコリのたちやすい田畑であったり、排気量の多い道路の近くだったりすると、住宅街の家よりもフィルターは汚れやすくなるでしょう。
そのため、取扱説明書では半年に1回で問題ないと記載されていても、家のまわりの環境によってはメンテナンス不足になることもあります。
換気システムを設置する際は、家のまわりの環境について説明し、どの程度のメンテナンスが必要かメーカーに確認しておきましょう。
換気量を5段階もしくは10段階で調整できるものを選ぶ
家には必要換気量というものがあり、これは体積の半分の量を1時間で換気できる量(0.5回/h)と建築基準法で決まっています。
今回測定した家の必要換気量は133.4㎥/h(延べ床面積106.71×天井高2.5÷2)でしたが、引き渡し時の設計換気量は185㎥/hで、0.69回/h換気する設計になっていました。
換気回数は多ければ多いほどいいのではないかと思うかもしれませんが、このように換気量が多いことを「過換気(かかんき)」といい、必要以上に換気システムが稼働するため余計な電気代が発生してコスト面の負担が大きくなってしまいます。
ただ、過換気のような換気設計になっていた場合でも、細かく換気量を調整できれば無駄に電気を使うことも、必要以上に換気することもなくなります。
なので、24時間換気システムを選ぶ際は、強弱やオンオフといったスイッチではなく最低でも5段階、できれば10段階の調整機能のあるものがおすすめです。
▶動画【保存版】新築住宅で換気システムを決めるときは何を聞いたらいい?【Q&A】
給気口から新鮮な空気を取り入れるため家の気密性能を高める
今回測定した家の排気量は合計で157㎥/hありましたが、給気口からの給気量はフィルターなしでも51㎥/hしかありませんでした。
そうなると排気される空気の方が多く、残りの約100㎥/hの空気はどこから取り入れているのかが問題になります。
実は給気口から取り入れられなかった約100㎥/hは、すべてスキマ風です。
家のスキマと給気量は以下のような関係になっていて、今回の建売住宅のようにC値が2.5㎠/㎡と気密性能が低いと、給気口からは全体の半分以下の量しか給気できません。
スキマが多い家では、スキマから入ってスキマから出てしまったり、給気口から入った空気が排気口ではなくスキマから出たりと換気経路が乱され換気システムが機能しなくなります。
正しく換気するためにも住宅を建てる際は必ずC値を聞き、1.0㎠/㎡を下回ることを約束してくれる工務店への依頼をおすすめします。
すでに家を建ててしまった方は、こちらの動画「【DIY】気流止めって自力でできる?住んだ後の補修ポイントを解説!【Q&A】」を参考に家のスキマを埋めてみてください。
もし、「スキマ風でも同じ空気だから大丈夫じゃないの?」と疑問に思った人はこちらの動画「気密不足によるスキマ風も結局新鮮空気じゃないの?【Q&A】」を参考にしてみてください。この動画では、スキマ風による換気がどうしてダメなのかをわかりやすく解説しています。
あわせて気密がしっかりとれているか、家が完成する前の中間(断熱気密層ができたタイミング)と完成後に2回ほど気密測定してもらうことをおすすめします。
換気量の測定や気密測定はすべての工務店が行なってくれるわけではありませんので、契約前に測定してくれるかについても確認しておくと安心ですね。
家ができた後で換気できているか不安な人は、工務店に換気量測定をしてもらえないか相談してみてください。また、しばらくメンテナンスをしていないのであれば、取扱説明書に従って掃除したりフィルターを交換することをおすすめします。
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