【2×4の注文住宅】施主の要望で住宅性能調査をしてみた結果
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こんにちは、日本住環境 広報部(イエのサプリ編集部)です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。
家を建てる際、木造軸組工法やRC造など素材も含めどのような工法でつくるか選ぶことができます。
中でも年々増えているのが枠組壁工法(わくぐみかべこうほう)、一般的にツーバイフォー工法(2×4工法)と呼ばれる工法です。
これは元々カナダから伝わった工法で、優れた耐久性や高気密な住宅をつくりやすいなど多くのメリットがあります。
ただ、丁寧に施工してくれる工務店を選ばないと、壁内結露により家が腐ることも。
今回の記事では、ツーバイフォー工法の特長やメリット・デメリットについて解説します。
また、実際にツーバイフォー工法で建てた注文住宅の気密や換気を検証したので、画像とともに結果を紹介していきます。
目次 [表示させる]
ツーバイフォー工法(2×4工法)とは?特長や在来工法(木造軸組工法)との違い
ここではツーバイフォー工法の特長や歴史、在来工法との違いについて紹介します。
ツーバイフォー工法とは
ツーバイフォー工法は、ツーバイ材という2×4インチや2×6インチなどの木材に構造用合板を張り付け、工場で1枚のパネルに加工してから現場へ運び、組み立てる工法です。
ツーバイフォー工法は、元々カナダの寒冷地で年間暖房費を4分の1に削減することを目的として開発された工法です。
そのため高気密、高断熱、24時間換気、全室暖房ができる高性能住宅になるよう考えられています。
当時、ツーバイフォー工法は「R-2000」と呼ばれており、1985年にカナダから日本へ技術提供されました。
R-2000には細かな施工方法が記載されたマニュアルが用意されており、その通りに施工することで日本でも高気密高断熱の家をつくれる工務店が増えていきました。
在来工法とツーバイフォー工法の違い
柱で組み立てていく在来工法と面を組み立てていくツーバイフォー工法では、様々な部分に違いがあります。
|
在来工法 |
ツーバイフォー工法 |
柱のサイズ |
105㎜角の木材を使用 |
2×4インチの柱を2枚重ねるのが基本。場所によって2×6や2×8になる |
施工方法 |
現場でゼロから施工 |
工場で柱と構造用合板を接合したものを現場で組み立て |
設計の自由度 |
高い |
在来工法より低い |
気密のとりやすさ |
家の間取り・設計によってはとりにくい |
とりやすい |
施工期間 |
ツーバイフォー工法より長い |
在来工法より短い |
実際に何を1番大切にしたいかで決めると希望に近い家をつくれるでしょう。
ツーバイフォー工法で家をつくるメリット
ツーバイフォー工法を選ぶとどのような家が建てられるのでしょうか。ここでは、ツーバイフォー工法で家をつくる主なメリットについて紹介します。
耐久・耐震性に優れており震災にも強い家をつくれる
ツーバイフォー工法は耐久性と耐震性に優れており、地震などの震災でも家の倒壊を回避できる可能性が高くなります。
実際に東日本大震災の際、震度6弱以上を観測した地域のツーバイフォー工法で建てた家にアンケート調査を行ったところ、津波被害を除いた約98%が大きな地震被害を受けたにも関わらず「当面は修復しなくても住める」という回答でした。
北海道の時計台など、過去にツーバイフォー工法で建てられ今も残っている建物からも、耐久性の高さがうかがえます。
この耐久性や耐震性の高さの秘密は、家の構造にあります。
ツーバイフォー工法はモノコックという構造でつくられており、これは高い耐久性が求められる新幹線やレーシングカーなどにも採用されている構造です。
骨組ではなく、床や壁などの外板に強度を持たせることで受けた衝撃を一部分に留めず、全体に分散することができます。
▲【参考:ツーバイフォーとは|一般社団法人 日本ツーバイフォー建築協会】
地震の多い日本で、資産を長持ちさられるのは大きなメリットです。
耐火性が高く安心・火災保険料が安くなる
ツーバイフォー工法は特別な防火対策をしていなくても構造的に耐火性が高く、消火効果と防火機能を持っているのが特長です。
ツーバイフォー工法の家の壁内は下図のようになっており、火事が起きて壁紙が燃えても石膏ボードに含まれる結晶水が熱分解を起こし、水蒸気を発生させます。
たとえ壁紙が燃えても、石膏ボードより外側の構造材は冷えて発火しづらくなり、小火程度であればそのまま鎮火することもあるようです。
万が一構造材が発火しても、枠組材が一定の間隔で組み込まれているため、火の進行を妨げてくれます。壁内の中に何重も防火戸があるようなイメージです。
耐火性が高く火災のリスクが少ないため、ツーバイフォー工法の家では特別な防火処置をしていなくても、安い保険料で火災保険に加入できます。
火災の多い乾燥した地域では、オプションで防火処置を付ける前に、ツーバイフォー工法を検討してみてもいいかもしれません。
在来工法より気密がとりやすい
ツーバイフォー工法は面で家がつくられるため、気密がとりやすいのもメリットの1つになります。
在来工法と比較して気密処理が必要になる箇所が、構造の境目(壁と床、壁と天井など)や開口部分などと少なく、比較的に簡単に対応できるからです。
気密は建てる際にしっかり処理しておけば、10年以上経過しても特別なトラブルがない限り性能を維持できます。
実際に計測した築年数20年の家では、C値(気密性能の指数。1.0㎠/㎡以下から高気密住宅と判断される)の劣化は約0.3㎠/㎡だけでした。
最初に0.5㎠/㎡の高気密住宅を建てておけば、20年経ってもC値1.0㎠/㎡以下の高気密住宅に住めてしまうのです。
【計測結果などくわしくは下の動画をご覧ください】
1つだけ注意したいのは、ツーバイフォー工法はあくまで気密がとりやすいだけで、最終的に高気密になるか低気密になるかはハウスメーカーや工務店の技術次第です。
そのため、契約前に必ずC値や気密測定について確認するようにしましょう。
ツーバイフォー工法で家をつくるデメリット
色々なメリットを紹介してきましたが、デメリットもあります。ここでは、後悔しないように知っておきたい、ツーバイフォー工法のデメリットについて紹介します。
パネルで家をつくるので外観デザインに制限がでる
ツーバイフォー工法のデメリットは家の外観デザインに制限がでてしまうことです。
例えば、なめらかな曲線のある家をつくりたいと思っても、パネルは曲げられないのでつくれません。
また、窓の位置についても端から910㎜部分のところにはツーバイ材があるので、設計できない決まりになっています。
リフォームの際もパネルを動かす必要があるので、在来工法と比べて一定の制限がでてしまう可能性があります。
ただ、一定の制限がでてもおしゃれな家はできますので、設計士とよく相談してみてください。
施工ミスにより壁内結露で合板が腐りやすくなる
どのような工法でも工務店の技術や知識不足によっては、木材が腐ってしまうことがあります。
ツーバイフォー工法でよくある例としては、家の内側に防湿気密シートが使用されないことで透湿バランスが崩れ、壁内結露が発生し壁の中から腐ってしまうケースです。
本来、壁内で結露させないように外壁側の透湿抵抗比を下げることで、壁内に侵入した水蒸気を外へ排出させる必要があります。
しかし、ハウスメーカーや工務店によっては、防湿気密シートを使わず袋入り断熱材の20~50μのシートで対応するケースもあるようです。もちろん袋入り断熱材の袋には、防湿気密シートのような透湿抵抗は期待できません。
そのため、家の中の水蒸気が袋入り断熱材を通り抜け、構造用合板を濡らしカビの発生や家を腐らせてしまいます。
依頼するハウスメーカーや工務店がどのような施工をしているかは、構造見学会で確認できますので、契約前に必ず確認しておきましょう。
【壁編】良い工務店を見抜く眼力を伝授
【検証】ツーバイフォー工法で建てた注文住宅の性能とは
ツーバイフォー工法を注文住宅で建てた家(ツーバイフォー住宅)の気密性能や換気性能について、検証してきました。
ツーバイフォー住宅の気密測定と結果
検証に伺った家を建築した工務店は、あまり気密に対し積極的ではなかったようです。
実際に家を確認したところ、配管・配線など複数の個所に大きなスキマを発見。
ただ、スキマを埋めて気密測定をしたところ、C値(相当隙間面積)が 0.9㎠/㎡、αA(総相当隙間面積)128㎠とよい結果を得ることができました。
少しの修復でC値1.0㎠/㎡を切れたのは、ツーバイフォー工法が気密をとりやすいことや工務店側がある程度丁寧に処理してくれたからかもしれません。
ツーバイフォー住宅の換気量測定と結果
続いては、この家の換気量と給気量について測定していきます。
換気量について
この家の必要換気量は109.3㎥/hですが、どの程度換気できているのでしょうか。
実測の結果、排気口からの換気量は合計で96㎥/hでした。
少しホコリが付着している換気扇もあり、メンテナンスを十分に行うことで必要換気量に届くと考えられます。
メンテナンスを定期的にしており、ホコリもほとんど付着していないのに換気量が大幅に落ちていることもあります。
この家ではお風呂の換気量が他と比較して大幅に落ちていました。
メンテナンス以外に換気量が落ちる原因はダクティングです。
力の弱い換気扇でダクティングしてしまうと大幅に換気量が落ちることがあります。
ダクティングの方法で必要換気量がとれないことがないように、換気設計をしてもらった際は確認が必要です。
この家では換気量が落ちることを見込んで、必要換気量より多めの換気設計が行われていました。
給気量について
次は給気量の計測です。給気口からの給気量は、合計で35㎥/h。
フィルターが汚れて給気量が少ないところもあったためフィルターを外し、再度計測を行いました。
再計測したところ、各給気口からの給気量は15㎥/h。
この家の給気口は4つあり、合計で60㎥/h給気できていました。
換気量96㎥/hに対し、60㎥/hは少ないと思うかもしれませんが、C値が1.0㎠/㎡前後であれば給気口からの給気量は換気量の半分程度になります。
そのため、フィルターがきれいな状態であれば適切な換気量を確保できていることになります。
フィルターや換気扇のメンテナンス方法
フィルターは水洗いできるものであれば、そのまま洗っても問題ありません。ただ、何度も水洗いすることで縮んでしまう材質もあります。縮むと虫が侵入する原因にもなるので、まずは掃除機でゴミやホコリを吸いとってください。
油汚れは掃除機で吸ってもとれないことが多いので、水洗いするかメーカーに相談して交換するようにしましょう。
交換は、メーカーのHPや家をつくったハウスメーカー、工務店で取り扱っています。また、色々な会社のフィルターを取り扱っている会社もあります。そういったところでは、各フィルターの特長やどういう人におすすめかなどの相談もできますので、そちらもおすすめです。
まとめ|高性能なツーバイフォー工法の家に住むには
ツーバイフォー工法は、高断熱高気密にしやすく性能面でも優秀な工法です。長持ちする家をつくりたいけど、工法に迷っている人はツーバイフォー工法についてハウスメーカーや工務店に相談してみてください。
ただし、家をつくるハウスメーカーや工務店の技術によって、最終的な性能が決まります。そのため、ハウスメーカーや工務店を選ぶ際はツーバイフォー工法の施工経験だけではなく、C値の目安や中間で気密測定してくれるかは必ず確認するようにしましょう。
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